トランプ大統領は「中国は依然として輸出を制限している」と非難し、中国側も「合意を破っているのはアメリカのほうだ」と反論する水掛け論が勃発し、再び米中間で衝突が始まっている。

 中国側は今回の合意によって、アメリカが半導体などハイテク分野での技術規制を緩めることを期待していたが、アメリカはジェットエンジン部品の輸出を禁止したままで、半導体設計ソフトへのアクセスも従来どおり厳しく制限しており、これが中国の航空産業やファーウェイの製造能力に深刻な打撃を与えている。

 このような状況下で、中国はレアアースの禁輸措置をほぼ維持しており、アメリカだけでなく欧州の製造業も在庫切れの危機に直面している。特にレアアース磁石については深刻な状況だ。

 アメリカの自動車産業では、減産や工場停止の懸念が高まっており、磁石がなければモーターが作れないことから、在庫が尽きれば生産ラインは止まってしまう。欧米の自動車産業への悪影響は避けられない。

アメリカはなぜ自国で
レアアース磁石を作れないのか

「レアアース磁石がそんなに重要なものなら、なぜ自国で作らないのか?」という疑問を持つ人もいるかもしれない。

 実際、レアアースは「希土類」と言う割に、世界各地で採掘自体は可能だ。だが、問題はその後の「精製・加工」の過程にある。

 アメリカにもかつてはレアアース工場が点在していたが、1990年代から2000年代にかけて、グローバル化の波の中で次々と中国へ移転した。

 当時の中国は環境規制が緩く、用地・用水・電力も政府が提供するなど、工場建設については圧倒的な競争力を持っていた。さらに独自の精錬技術を磨き上げたことで、気がつけばレアアース磁石について世界の9割を中国が占めるようになっていた。

 また、1998年にはアメリカ唯一のレアアース鉱山「マウンテンパス鉱山」が汚染事故で閉鎖され、それ以来、長らく生産が停止していた。近年ようやく再開されたものの、価格競争力では中国にまったく及ばない。