ツイッターは私有の領地であり、世界の「公共の広場」となることは決してない。重要なのは、マスクがこれを使って有力なクラウド封土を築き、新たなテクノ封建支配階級の一員、つまりクラウド領主になれるかどうかだ。それは自動車や人工衛星によって日々蓄積される既存のビッグデータ網とツイッターをつなぐことで、クラウド資本をうまく強化できるかどうかにかかっている。

 マスクによるツイッターの買収で彼の事業が成功するにせよ失敗するにせよ、これをテクノ封建制という切り口で見ると、世界で起きていることがより鮮明に理解できるようになる。

 これはひとつの特殊な例で、影響の範囲は比較的限られている。しかしテクノ封建制は私たち全員に関わる、より広範でさらに切実な問題をも引き起こす。

テクノ封建制によって
不況が続き格差は拡大する

 大変革には新たな危機がつきものだ。農業が発明されたとき、人々はコミュニティのなかにさまざまな植物と動物を集め、知らないうちに恐ろしい感染症を引き起こす有害なウイルスを増殖させてしまった。資本主義の到来は、世界恐慌のような経済危機を引き起こした。そして今、テクノ封建制は、すでにある社会の不安定要因をさらに深刻にし、生存に関わる新たな脅威へと変えようとしている。特に、最近のコロナ禍に続く大インフレと生活コストの急上昇については、テクノ封建制の文脈以外からは正しく理解することはできない。

 2008年の金融危機後、12年もの長きにわたって中央銀行が銀行屋の損失を肩代わりするために大量の貨幣を発行してきた。銀行屋のための社会主義と、それ以外のすべての人が背負わされた緊縮財政によって、投資が縮小し、西側資本主義のダイナミズムが失われ、金ピカな不況に陥ってしまった。このあいだに中央銀行の腐ったカネで行われた投資は、クラウド資本の蓄積に回った。2020年までにクラウド資本に蓄積されたクラウド・レントは、先進国の純所得の多くの部分を占めるまでになっていた。このことが、利潤が後退してクラウド・レントが優位に立ったことを端的に表している。