今回の非上場化は、トヨタ源流の豊田自動織機を軸とする株式持ち合いの解消に加え、“企業防衛”の一面もある。ただし、豊田章男氏は豊田自動織機の非上場化について、「トヨタらしさの原点に戻り、グループビジョンを次のステップに進めるため」と説明している。章男氏は新たなトヨタグループビジョンとして「次の道を発明しよう」を宣言しており、豊田自動織機の株主を豊田不動産と自身のみとすることで、グループの“トヨタらしさ”という原点に立ち戻ることを狙った施策であるといえよう。

 一方、その豊田章男氏は同じく10日、日本自動車会議所の定時総会で新会長に選出された。

 東京・経団連会館で正午から開かれた総会後の懇親会では、豊田章男氏が挨拶に立ち「“クルマをニッポンの文化に!”を新たな合言葉に日本の自動車産業の横断総合団体のトップとしてさまざまな活動をしていく」と、業界全体でのリーダーシップを発揮する決意を示した。自動車会議所は、内山田竹志前会長(トヨタ前エグゼクティブフェロー)から8年ぶりの会長交代となる。

 豊田章男氏は、懇親会後に記者との懇談も行い、日本の自動車税制について「世界で一番高く、複雑な税金制度となっている。この自動車関係諸税の抜本的改革へ、財源も含めて考えるべき。自動車会議所にはユーザー団体のJAFも加入しており、自動車ユーザーを含めると2500万人となる。私が全団体の接着剤となっていく」と、改革への意欲を示した。

 また、「モビリティ変革にあって30年から40年に向けても日本を自動車産業が引っ張り、中心で支えていくことになるだろう。そのためにも、(私が自動車会議所の会長を)当分やらざるを得ない」と、業界リーダー役への意識と日本経済を支えるモビリティ業界の変革を進めていく考えを改めて示した。

 自動車会議所は、豊田章男氏の祖父である豊田喜一郎氏が創設に奔走した。章男氏の父である豊田章一郎氏は、自動車会議所会長時代の04年に念願の自動車会館を東京・芝大門に開設している。豊田章男氏の会長就任で、豊田家が3代にわたり自動車会議所の会長を務めることになり、同氏には強いリーダーシップが期待されるというわけだ。

 10日には、さらにイベントがあった。懸案だったトヨタ子会社の日野自動車と三菱ふそうトラック・バスの経営統合がようやく最終合意に至り、トヨタと日野自、三菱ふそうと親会社の独ダイムラートラックの4社による持ち株会社設立と日野自・三菱ふそうの完全子会社化を発表。午後7時から4社共同の記者会見が行われた。