見逃せない日本郵便の不適切点呼の実態

 国交省は、「貨物自動車運送事業輸送安全規則」にて、原則として対面での点呼を義務付けている。その主な内容は、運転者に対する酒気帯びの有無、疾病や疲労、睡眠不足でないかなど安全運転を確保するための確認だ。運転免許証の所持、有効期限の確認も含む。

 それら日々の点呼の内容は、記録簿に記録し1年間保存しなければならない。点呼記録簿のフォーマットは、国交省のウェブサイトにアップロードしてある。点呼は、物流業務を行う事業者にとって広く当然の行為であることは明白だ。

 点呼をはじめ規則に違反した事業者には、軽微なものから車両停止処分、事業停止、事業許可の取り消しの3段階の罰則が科せられる。報道によると、今回のような大手事業者に対して許可を取り消すのは極めて異例だ。日本郵便の不適切業務は、それだけ深刻な問題といえるだろう。

 一連の事態がどのように発覚したのか、今のところ日本郵便は明らかにしていない。同社によると1月下旬、近畿支社管内の小野郵便局で点呼を実施せず配送を行った事案が発覚したという。法令を順守しない良心の呵責から、社員が内部通報制度で実態を通告したのかもしれない。同社に限らず、内部通報によって業務運営が法令通りに行われていない実態が露呈するケースは多い。

 日本郵便は3月、近畿支社管内140の郵便局で、適切に点呼業務が執行されていなかった事実を公表した。その後、全国調査を開始。四輪車の平均の稼働台数に応じて、1週間から最大1カ月間の乗車前後の点呼実施状況を調査した。不適切か否かの判定は防犯カメラの映像、もしくはヒアリングによるものだ。

 その結果、3188の郵便局のうち2391、実に75.0%もの郵便局で不適切な業務が常態化していたと明らかになった。