日本郵便に見る“悪事発現の法則”

 日本郵便の違反点数は、許可取り消し基準の2.5倍に達したという。関東運輸局管内だけで違反点数は200点を超えた(自動車貨物運送の事業許可取り消し基準は81点)。

 日本郵便は今回の調査を、四輪車(トラックとワンボックスカー)を対象に実施した。郵便配達の原付バイクは対象になっていない。調査実施後も、週末の夜の配達業務で点呼が適正に行われていない実態は続いたとの報道もある。

 振り返れば、日本郵政グループ全体で不祥事が相次いでいる。かんぽ生命の不正販売、ゆうちょ銀行の顧客情報の不正利用、日本郵便による下請け業者への高額な違約金の徴収などだ。

 不祥事や不適切な事案は、隠そうとしてもいずれ発覚する。しかも、発覚した際には手が付けられないほど問題が深刻化し、対応が難しいことも多い。筆者はそれを、“悪事発現の法則”と呼んでいる。実際、わが国では不適切な会計処理に端を発して債務超過に陥り、自力での経営再建に行き詰まった大手企業もあった。

 日本郵便は、許可の取り消しによる配当業務の停滞を、提携先の物流企業などへの外注によって対応する方針のようだ。今のところ、大きな混乱は避けられるだろうとの見方はある。

 しかし、今回の不適切な点呼業務の実態を見る限り、同社内部では当たり前のことを実行する組織の風土が醸成されていないと指摘できる。その社会的責任は重い。

 宅配便(トラック)取扱個数で見ると、最大手はヤマト運輸の宅急便、次に佐川急便の飛脚宅配便、ゆうパックはそれに次ぐ第3位だ。メール便の取扱数では日本郵便が国内シェアの79.6%を占める(令和5年度宅配便・メール便取扱実績、国交省)。

 今後、事態を重く見た政府が追加の調査を実施し、新たな問題が浮上する可能性は排除できない。社会の公器として長期存続を目指すため、日本郵便が法令順守、適切な業務の執行体制を迅速に構築することが求められる。