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鴻海は、現実世界を仮想空間上で再現する「デジタルツイン」など、エヌビディアの先進技術を活用。これにより、ロボットアームの動きをAIに学習させ、AI向けサーバーの生産工程を劇的に効率化させた。結果として、欠陥の解決や装置の調整においてロボットが業務の約8割を担うようになり、慢性的な熟練人材の不足を補っている。
テスラのイーロン・マスクCEOも2025年末までに自社施設でヒト型ロボット「オプティマス」を数千台稼働させ、2030年までには年間数百万台の量産体制を確立することを目指していると語っている。
「AIがテロを予測し、交通を制御する」
見えない頭脳が支配する世界が迫っている
ロボットという“身体”が効率的に動くためには、膨大な情報を解析し、最適な行動を指示する“頭脳”が不可欠である。この頭脳にあたる半導体を供給するのがエヌビディアであり、その頭脳を補完する“予測・管理AI”の分野で頭角を現しているのがパランティア・テクノロジーだ。
パランティア・テクノロジーは、政府や企業向けに、膨大なデータを解析して、将来のリスクや機会を予測するプラットフォームを提供している。物資供給の遅延要因の予測から、テロの予兆検知まで、高度な未来予測を可能にしているのだ。杉山氏は「パランティア・テクノロジーが得意とするデータ分析技術を活用すれば、自動運転車が遭遇しうる複雑な交通パターンに対し、AIが瞬時に最適解を導き出すことも可能になるかもしれません」と述べ、その技術の応用範囲の広さを示唆している。
ロボットが工場で働き、自動運転車が街を走る光景は、もはや未来の話ではなくなってきた。エヌビディア、テスラ、パランティアといった米国の先端テクノロジー企業が、「フィジカルAI」を武器に、私たちの新たな現実を大きく前進させようとしている。
AI時代を制する可能性が高い
エヌビディアとパランティア、テスラは「買い」!
AIの進化に対する期待の高まりを背景にエヌビディア、パランティア・テクノロジー、テスラの3社は、米国株式市場の中心的存在になりつつある。投資先としての3社の魅力はどうなのだろうか。
エヌビディアは、AI向け半導体の旺盛な需要を受けて、2025年2~4月期の売上高が前年同期比69%増を記録し、株価は上昇基調を維持している。さらに、サウジアラビア政府系ファンドによる大規模データセンター建設計画や、米国政府によるUAEへの同社製AI半導体の大量輸出を承認する方針など、今後の業績を押し上げる好材料もそろっている。こうした状況を踏まえ、ニューヨーク在住でマンハッタン・グローバル・フィナンシャルの森崇氏は、2025年9月末までの投資判断を「買い」としている。

パランティア・テクノロジー株価チャート(週足)
チャート提供:マネックス証券
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同様に、森氏が「買い」と評価するパランティア・テクノロジーだ。2025年1~3月期の業績が好調で、売上高は前年同期比39.4%増、営業利益は同2.17倍に拡大。米国政府向け案件が引き続き堅調なことにくわえ、大手民間企業からも同社のAIシステムが高く評価され、継続的な導入が進んでいる。独自性の高い高度なAIサービスが際立っており、今後も安定した顧客基盤の拡大が期待される。
一方、テスラは2025年1~3月期においてEVの販売台数が伸び悩み、業績は市場予想を下回った。しかしながら、トランプ政権が輸入車に対して25%の追加関税を発動したことで、米国内で生産される同社EVの競争優位性が再評価され、株価は大きく上昇した。マスクCEOとトランプ大統領との関係悪化が不安要因となっているものの、「ロボタクシー」や「オプティマス」など、長期的な成長への期待は依然として高い。杉山氏もテスラの投資判断を「買い」としている。
これら3銘柄はいずれも、フィジカルAI時代をリードする企業として、プロの間でも注目度が一段と高まっている。