気分で怒ってしまうようでは
人はついてこない

 能力不足は補えますが、気分でスタッフを怒ってしまうなど人格的な面に問題があると、人はついてきません。

 第2回で「心理的安全性が確保された職場であることが重要」と述べましたが、具体的にはスタッフが自分の意見が言える環境づくりということになります。誰もが物を言える、罵倒されることがないという安心感は必須です。

 ドムドムではお客様に対し、心を尽くす接客を心がけていますが、それは店舗スタッフに対しても同様です。店長が一人一人のスタッフに「おはようございます」「お疲れさま」「ありがとう」といった思いやりのある言葉がけをしながら、その人の良さを見いだしてほしいと思っています。ですからそういった部下への目配りができない人は、上司に向いていないといえるでしょう。

「飲みにケーションをしなくても
人望のある上司」がしていること

 未熟な店長と、とても優秀な店長がいるとすれば、その差は経験というよりも「どれだけ居心地の良いお店にするか」という“心の尽くし方の差”だと私は思います。店長が「このお店を良くしたい」と考え尽くしていれば、たとえ内気な人で飲み会など開かなくても、そこで働くスタッフは信頼してついていくでしょう。

 ドムドムに20年間アルバイトとして勤務し、正社員、そして店長に昇格した女性がいます。彼女はお酒を一滴も飲まないので、そういった飲み会の類いは開催しないのですが、スタッフからものすごく人望があります。彼女が店舗を異動すると、何人もアルバイトスタッフが辞めてしまうほど。

 絵が得意な人なので、店長自らPOPをたくさん作ったり、本社の広報に相談して店舗独自のSNSも立ち上げたりするなど、お店を良くしたいという姿勢が前面に出ているのです。

 一方で、上長の前ではいい顔をするけれども、アルバイトスタッフの前では横柄な態度を取るなど、お店のことを心から考えていないければ周囲は敏感にそれを察知するでしょう。

 同じ上司でも、ドムドムのようにアルバイトやパートスタッフを束ねて店長を務める人と、下に社員がいる方々のグループの長では「求められる能力が違う」という意見もあるかもしれません。これは私の考えですが、立場によって「責任」は変わるかもしれません。けれども仕事の質、仕事に懸ける思いは変わらないのではないかと思うのです。