骨盤底筋体操や膀胱訓練で
頻尿や尿意切迫感が改善するケースも

 骨盤底筋体操は仰向けに寝て行う方法が有名だが、座っている姿勢でもできる。両足を肩幅くらいに開いて椅子に座り、肩の力は抜いて、トイレを我慢するときのように肛門と陰茎のつけ根を締めて5秒数え、ゆっくり緩める。これを10回繰り返して1セット、1日4~5セット繰り返す。尿漏れの予防にもなるので、仕事中、電車やバスの中、テレビや動画を見ているときなど、座っている時間を活用して試してみよう。

 膀胱訓練は、尿意があってもトイレへ行くのを我慢し、排尿の間隔を少しずつ伸ばしていく方法だ。深呼吸をし、骨盤底筋トレーニングのときと同じように肛門と陰茎のつけ根を締めるようにすると、膀胱の収縮がおさまって尿意が遠のく。

 また、利尿作用のあるカフェイン飲料、アルコールの取り過ぎには注意が必要だ。夕方以降にカフェイン飲料やアルコールの摂取を控えるだけで、過活動膀胱が改善し、夜中にトイレに起きる回数が減るケースもある。

「排尿日誌をつけて1日の排尿回数、尿量を確認することも重要です。尿量を測る容器は、ペットボトルの上の部分を取り除き、50mLごとの目盛りをつければ、自分で簡単に制作できます。1日の尿量の合計が『体重×40mL』以上、例えば、60㎏の人なら2400mL以上の場合は多尿です。水分の取り過ぎの可能性があるので、水分摂取量を見直しましょう。食事の味が濃いと水を飲み過ぎるので、塩分を控えることも大事です」

 排尿日誌のフォーマットは、日本排尿機能学会のホームページからダウンロードできる。排尿日誌のアプリをダウンロードして使ってみてもよいだろう。

 行動療法や生活習慣の見直しで改善しない、あるいは、前立腺肥大による症状が強く出ている場合には、α1遮断薬やPDE5阻害薬などの薬を服用する。α1遮断薬は過剰に収縮した前立腺の平滑筋の緊張を緩め、PDE5阻害薬は血管を拡張させることで、排尿障害を改善する薬だ。前立腺が30mL以上と大きいときには、前立腺細胞の増殖に関わる男性ホルモンの影響を抑える5α還元酵素阻害薬を併用することもある。

 さらに、薬物療法を3カ月以上続けても症状が改善しない場合には、手術を検討する。体積が30~80mLの前立腺に対する手術は、尿道から小型カメラと器具のついた内視鏡を入れ、前立腺の肥大した組織を削り取って尿の通り道を作る「経尿道的前立腺切除術(TURP)」が主流だ。

 やはり尿道から内視鏡を入れ、レーザーで前立腺の肥大部分を取り除く方法もある。どの手術も3日~1週間の入院が必要で、術後に射精障害や尿失禁などの合併症が起こるリスクがある。