
あなたの周りにも、話があちこちに飛ぶ変わった人がいるかもしれない。その人は、驚くほどクリエイティブな発想を持つ天才の可能性がある。奇天烈に思える発言は、脳がさまざまな要素を拾っているからだというのだ。本人すら気づいていない脳の秘密を、最新研究からひもとく。※本稿は、アンデシュ・ハンセン著、久山葉子訳『多動脳 ADHDの真実』の一部を抜粋・編集したものです。
ADHDの子供が見せた
型にハマらない創造性
ある実験でADHDの子供を含むグループに何種類もおもちゃを見せてから、「今までにない新しいおもちゃを考えて、おもちゃ会社を手伝ってほしい」と頼んだ。時間は5分しか与えられなかった。
子供がわずか数分で革命的なアイデアを思いつくとは思えないし、それが目的でもなかったが、研究者がどこに着目したかというと、さっき見たおもちゃをコピーするのか真似ではないアイデアを出せるかどうかだった。
新しいアイデアを考える前に既存の例を見てしまうと創造性に悪影響が出ることがわかっている。見たものにとらわれてついコピーしてしまうのだ。しかし本当にクリエイティブな人ならば前例にとらわれず無視することができるはずだ。
その結果、ADHDの子供の方が既成概念にとらわれずに考えることができていた。見たばかりのおもちゃをコピーすることなく、独自の提案をした――つまりクリエイティブだったのだ。
これらの実験から、ADHDの人は子供でも大人でも少なくともブレインストーミングという分野ではよりクリエイティブであることが示された。では彼らの脳の中では何が起きているのか詳しく見ていこう。