でもそのとき、リーダーは背中を見せて先頭を走るというよりも、サザエさんのエンディングのように、みんなの方を見ながら手招きをして、こちらの方に行こうと導いていく。しかも芸の細かなところは、そこでリーダーが転んだりする。するとメンバーがすぐに手を差し出し、その間は別のメンバーがリーダーの役割を担っていく。

 なぜ、若手はこんなシーンを描くと思いますか。

 強く引っ張るリーダーではなく、一人ひとりと向き合い、みんなで相談して、手招きをしながら一緒に進んでいくリーダーシップ。リーダー自身もうまくいかないこともある。そのときは周囲が助けてくれる。時にはメンバーもリーダーシップを発揮する。

 こんなリーダーシップであれば、自分たちもリーダーになれる、なりたいというのです。何がこうした発想の違いを生むのでしょうか。

経営者が求めるリーダーと
部下が理想とするリーダー

 経営者はまさに経営者の視点でリーダーシップを見ています。未来への方向を示し、経営にとって大きな影響を与える決断をし、会社を守るのがリーダーシップだと考えています。

 そんな視点で見ると、周囲のリーダーたちが頼りなく感じてしまう。自分以外に大きなビジョンを描く人がいない、思いをもって決断をして引っ張る人がいない。そんなことでこの会社の未来は大丈夫なのかと不安になる。だからもっと思いをもって周囲を引っ張るリーダーシップを発揮してほしいと期待をする。

 ところが若い人がリーダーシップをイメージするとき、自分だけでなく周囲との関係性の中でのリーダーという存在をイメージしています。自分が周囲を引っ張るのではなく、周囲と一緒に前に進む。そのときに周囲から信頼される存在なのか、周囲が一緒にやろうと言ってくれる関係があるかどうかの方が大事だと思う。

 実際に、彼らの経験を聞くと、学生時代に部活や生徒会などでリーダーの役割を担った人も一定数います。そういう人たちの中には、周囲がまとまらずうまくいかなかった、その中で自分が周囲と話し合い、そこで心を1つにして乗り越えていったという話がよく出てきます。自分が引っ張ったのではなくとも、一緒に前向きに頑張ったという経験です。