リーダーシップはいらない
必要なのは自然体でいること

 そこで出てきたのが、リーダー自身がまずオーセンティックであることが重要だという考え方です。オーセンティックとは「本物、忠実な、ありのまま、信頼できる」という意味です。リーダー自身が誰よりも自然体で、悩んでいることも、苦しんでいることも素直に見せてくれる、語ってくれる人だと、周囲も安心して弱みを見せられる、自分のありのままを見せられる。

 逆に、リーダーという鎧を着て、リーダーらしくならなければと思う人ほど、自分のありのままの姿から乖離してしまいます。その中で、自分の本当の気持ちが言えなくなる。本音が見えない人になる。それが周囲との壁をつくってしまう。孤立するリーダーになる。

書影『静かに分断する職場 なぜ、社員の心が離れていくのか』(高橋克徳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)『静かに分断する職場 なぜ、社員の心が離れていくのか』(高橋克徳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 鎧を脱いで、自然な自分であることが、一人ひとりの心を軽くし、お互いのためにという気持ちを持てる人たちを増やしていく。それがメンバーの自発的な行動を引き出していく。リーダー自身が自然体で踏み出していくから、周囲も安心して踏み出していける。気づくと、みんなが自然とリーダーシップを発揮していく。リーダーシップの連鎖が起きていく。こんな関係をつくっていこうという考え方です。

 リーダーシップを発揮してくださいと言われると、どうも違和感がある、自分は違うと思ってしまう。でも、あなた自身が自然なふるまいをすることで、みんなも自然に振る舞える、そんな関係をつくってください。

 その中で、自分も周囲も、思ったことが言えて、前に踏み出す人がいたら、応援できる。そんな関係ができたら、自分から前に出ることも怖くなくなる。自然な行為になる。そんなリーダーシップが育まれる関係、環境をどうしたらつくれるか。一緒に対話してみてください。