当時、構造改革による業績改善やルノーとの資本関係改善などで経営は順調かに見えたが、23年の株主総会では、実質的な経営執行のリーダーと目されてきた当時のグプタCOOと、経済産業省出身で指名委員会委員長だった豊田正和社外取締役が退任したのだ。
グプタ氏は辣腕(らつわん)で知られ、ホンダのインド現地法人からルノー入りし、日産アライアンスで要職を務めたほか、内田体制でCOOに就く前は三菱自動車でCOOを務めており、ルノーも信頼を置いていた逸材だった。また、豊田氏も通商政策通であり、経産省のバックアップの要人でもあった。特にグプタ氏の退任には不可解な点があり、23年の総会ではグプタ氏に直接の弁を求める声が上がったが、当時の議長だった内田氏は、一切グプタ氏に発言させなかった。グプタ氏の退任に際して日産は、5億8200万円の退職慰労金を支払っている。
今回の総会でも、株主は内田前社長の弁を度々求めたが、結局自身で弁明することはなく、当時の“口封じ”をほうふつとさせた。
ルノーとの疎遠が鮮明に
新たな提携戦略が必須
さて、大荒れの総会なだけに、株主の発言や批判などに注目が集まるが、筆者は今回の株主総会の最大のポイントは、「仏ルノーのスナール会長が日産取締役から辞することで、四半世紀にわたるルノー支配が実質的に終焉。日産は自力再生ができなければ、どうなってしまうのか」という点にあると受け止めている。
今回の株主総会で、19年から日産取締役を続けてきたスナール氏と、ルノーの筆頭独立社外取締役であるフルーリォ氏が退任した。ルノーが指名する2人が新たに取締役に就いたが、直接のルノー関係者ではなく、ルノーの影響力が一段と低下することになるのだ。また、定款変更でスナール氏のためのポストである取締役会副議長も廃止された。