まず、10時スタートの株主総会は、巨額赤字転落に対するエスピノーサ氏の陳謝から始まった。再建計画の説明に進んだが、国内外7工場削減とうたったものの、国内工場の閉鎖など具体的な対象は「まだ決まっていない」と述べ、説明に30分もかけた割には具体的な中身はなく、筆者には冗長な時間に感じられた。

 そこから、第1号議案から第7号議案の説明をすると、突然会場から「議長解任」の動議がなされた。これについては、事前に用意されていたであろう“台本”に沿って否決されたが、早くも総会は荒れ模様となった。

 続いて、木村康取締役会議長から「ホンダとの経営統合破談について」の説明があった。「当初対等の統合を検討していたが、ホンダから日産への完全子会社化が提案されたことで、日産固有の持ち味を維持するのは困難と判断し、受諾しないことを取締役会で決めた。だが、ホンダとは引き続き、戦略的提携への検討を進める」と、従来通りの説明を繰り返した。

 そして、株主からの代表質問に移ると、くじ引きにより16人の株主が決められ、質問が行われた。なお、この間も内田氏への発言を促す動議や8人の社外取締役不信任の動議がなされており、不穏な空気が流れていたが、いずれも粛々と否決された。

 株主からは、エスピノーサ新社長に対し、決意表明や責任などを求める発言や、下請法違反への対応とサプライヤー対策、EV戦略からトランプ関税対応と、日産の経営方針に対する幅広い質問が行われた。果ては「やっちゃえ、日産」とCMが流れているが「何をやっちゃうの?」と揶揄(やゆ)する質問もあった。

 議案の採決に移ると、会社提案の12人の取締役案などは可決され、第3~7号議案の株主提案はいずれも否決された。

 それ自体はシナリオ通りといえるが、筆者が注目したのは、株主総会招集通知に「株主から木村康、永井素夫、井原慶子を選任しない(不再任とする)旨の株主提案がなされたが、会社提案に対する反対の意向表明と整理されるため、議案として取り扱わない」という趣旨の記載があったことだ。