日産は、ルノーが分社化して設立したEV会社「アンペア」への出資も見送った。ルノーでは、スナール氏とともにトップにあったルカ・デメオCEOが辞任し、仏ラグジュアリー大手のケリングCEOに転身する。ルノーの経営陣が刷新されることで、日産との関係も不透明感がある。
日産は再建計画の中で、三菱自も含めたルノーとの提携について、グローバル地域展開で協業を継続することにしている。だが、両社の実態を見れば、ルノーとは異なる新たな連合を組むことで生き残りを目指す、という選択肢も十分に考えられるのだ。
なお、スナール氏とフルーリォ氏は、今回の株主総会はパリからのモニター出席となり、両社の関係を薄める“静かな退任”となった。壇上に出席した内田氏が株主から再三、「経営悪化の説明、反省の弁を聞かせろ」と針のむしろ状態だったのとは、対照的だった。
日産再建を託されたエスピノーサ氏
課題は山積
さて、かつてのゴーン氏による日産再建は、当時の実力者のシュバイツァー会長によるルノーの後ろ盾と“持参金”に加え、ミシュラン時代から帝王学を若くして学んだゴーン氏のカリスマ性があって、V字回復につながった。
だが、今回の再建は前提条件が異なる上に、エスピノーサ氏の経営者としての手腕は未知数だ。
エスピノーサ氏は、メキシコ日産の商品企画を皮切りに、タイ日産など一貫して商品戦略・企画畑を歩んできた。日産本体でも商品企画で頭角を現した。しかし、子会社も含めて経営者の経験がない46歳という若さのエスピノーサ氏が、果たして日産の自力再生を達成できるのか。仮に能力があっても、エスピノーサ体制を支える取締役陣が“現状維持”で、それが果たせるのか。
さらには、提携路線にも不透明感が残る。ルノー支配から脱したいま、改めてホンダとの協業路線を強化し、再度の“統合”まで行き着くのか。はたまた新たな連携を求めるのか。
株主総会を乗り切っても、日産の行方は予断を許さない。
(佃モビリティ総研代表 佃 義夫)