エヌビディアは、通常のコンピューターのCPUが色々な計算や処理を柔軟にこなせる一方で、多数の計算を並列処理することが苦手なことに目を付け、大量並列処理が求められる画像処理専用の半導体の市場を作り出した。

 その延長線で、大量の行列計算を並列に高速処理する必要があるAI向けにもGPUが役に立つという発想につながった。マーケティング思考からビジネスモデルの形成につなげた成果だ。

SoC市場で日本は復活するか?
日本企業3社の挑戦が始まる

 現在、上位10番目前後で活躍するファブレスの台湾のメディアテックはUMCが顧客のために設計部分も受託できるように作った一部門から始まった。ストレージ機器やデジタルテレビなどで、異なるメーカーが似たような仕様のチップセットを求めることに気付き、自らメーカーとなって標準化した用途別半導体を売ろうというビジネスモデルに行き着いた。そこからスマホ向けアプリケーションプロセッサーを核とするSoCへの需要を捉えて大きく成長した。アンドロイドOSをグーグルが無償公開したことで中国、韓国、日本などにスマホメーカーが多数誕生したからだ。今ではTSMCの大口顧客である。

 米国ではアップルだけでなく、グーグルやアマゾン・ドット・コム、メタといった巨大IT企業が自らの半導体を企画・設計するようになっている。その結果、彼らの設計を製造できる回路設計に落とし込む設計受託や、その先の量産段階のコンサルティングや設計受託など、受託ビジネスの新たな需要が広がりつつある。

 ラピダスやソシオネクスト(編集部注/パナソニックと富士通の半導体設計部門を統合して発足したSoCの設計・開発および販売を事業とするグローバル企業)、ルネサスエレクトロニクス(編集部注/自動車や家電向けに、SoCの半導体を作る日本の大手メーカー)は、AIを軸として急速に立ち上がろうとしている新たな半導体ビジネスの需要をどうつかまえるのか。