酔っ払って愚痴をこぼす夫に
妻は覚悟を決めて切り出すべし
このように自分自身が抱える問題を否認しており、無自覚のままだと、心の病を治療対象にしている診療科を受診することはまずない。
それでは、どうすればいいのか。深酒によって肝機能が悪化する可能性が高く、職場での健診の際にそれを指摘されるだろうから、内科を受診していただくというのが現実的な方法だろう。
その際に、医師から深酒の原因を尋ねられて、ストレスということに夫が思い当たれば、心療内科に紹介してもらえる。
もっとも、それまでにはかなりの時間を要するし、肝機能の悪化を指摘されても、内科を受診しない方もいる。また、心療内科受診を頑として拒否する方もいる。第一、この方法は時間が相当かかるので、それまでに妻がさらに参ってしまうかもしれない。
大切なのは、夫が問題を抱えているのは自分自身だと自覚できるよう誘導することである。タイミングとして最適なのは、夫が酒を飲んで上司のダメ出しに対する愚痴をこぼし始めたときだろう。妻がじっくり耳を傾けながら、「かなりストレスが溜まっているようだから、一度メンタルヘルスの専門家に診てもらったら」と助言してはどうか。
もっとも、自分が身体を病んでいることは受け入れられても、精神を病んでいることは受け入れられない方が少なくない。夫が「自分は病気ではない。診てもらう必要はない」と頑として拒否する可能性も十分考えられる。
そうなったら、夫のダメ出しに耐えきれない妻としては、覚悟を決めるしかない。夫が愚痴をこぼし始めたら、「そんなに嫌なのなら転職したら」と勧めてはどうか。

幸か不幸か、前の会社で一緒に働いていて、吸収合併先の大きな会社に移った同僚の多くは退職しているらしいので、夫としても辞める口実を見つけやすいはずだ。
もちろん、現在の大きな会社を辞めたら、給与が下がるかもしれない。だから、妻としては、ダメ出しと収入減少のどちらを受け入れるかという選択を迫られる。ダメ出しのほうが精神へのダメージが大きいので、私としては収入減少のほうを受け入れることを勧める。
それに備えて、妻がパートを始めるのも1つの手である。理由を夫から尋ねられたら、「子どもが塾に通うようになり、費用がかかるので、そのため」と答えておけば、夫のプライドを傷つけずにすむだろう。