コラボ桶をきっかけにケロリン桶の販路も拡大していきました。全国での販売は東急ハンズとロフトにくわえ、ヴィレッジヴァンガードでの取り扱いがはじまりました。

 意外なことにケロリン桶はサブカルチャーとの親和性が高く、その後も人気アニメやゲームとのコラボ桶が実現しました。およそ10年間にわたり年数回ペースで、現在まで30種類のコラボ桶があります。

 山浦はケロリン桶の進化をどう見ていたのでしょうか。敬輔がケロロ軍曹とのコラボ桶を送ると、すぐに電話があり、驚きながらも少しうれしそうでした。

 令和3(2021)年1月、山浦は80歳の生涯を閉じます。生前の山浦は「自分は昭和の行商人だと思う。風呂敷を担いでナンボ」と語っていました。

内外薬品から
「富山めぐみ製薬」へ

 現在、ケロリンは内外薬品ではなく、富山めぐみ製薬が製造販売しています。富山めぐみ製薬誕生のいきさつには、「富山のくすり」への強い思いがありました。

 江戸時代からはじまった富山の置き薬は、300年を超える歴史があり、今も全国で利用されています。富山の製薬会社の多くは配置薬にルーツをもち、ずっと配置薬の製造を続けてきました。富山県は配置薬を「富山のくすり」ブランドの根幹として大切にしてきたのです。

 しかし、日本人のライフスタイルが大きく変わるなかで、配置薬市場は縮小を続けてきました。配置薬の生産高は平成9年の685億円をピークに減り続け、全国の配置従事者数も平成15年の3万人をピークとして右肩下がりになっています。

 そのため、富山の製薬会社はOEM(編集部注/委託を受けて他者ブランドの製品を製造することやその企業を意味する)や受託製造に経営のかじをきる一方で、配置薬事業部門を整理縮小してきました。

 いずれ配置薬事業から次々に撤退していくことは十分に予想され、伝統的な「富山のくすり」が消えてしまうという危機感がありました。

 この危機感をきっかけにして、平成26年、富山の製薬企業と関連企業が所属する富山県薬業連合会のなかに「配置薬振興委員会」が設置されました。笹山和紀(編集部注/笹山敬輔氏の父)が委員長を務め、「富山のくすり」存続のための業界再編に動き出します。