プレス発表をしてから、敬輔は取材のときに必ず聞かれる質問がありました。それは「内外薬品の看板をはずすことについて、ためらいはありませんでしたか」という質問です。
敬輔は「ありません」と答えてきました。歴史や伝統を守ることも大切ですが、社員が希望をもって働けるようにし、「富山のくすり」の未来のために積極的に投資をしていくことの方が、ずっと価値あることです。そのことは、製薬会社としての内外薬品というプライドを守ることよりも大切だと考えたのです。
新会社は3社が共同出資して設立し、名前は富山めぐみ製薬に決定しました。この名前には、「自然のめぐみ」豊かな富山で生まれた「薬のめぐみ」を全国に届けたいという思いが込められています。
現在、日本人が抱いている「富山のくすり」のイメージは、昔なつかしいもの、ちょっと古いものではないでしょうか。富山めぐみ製薬は、「富山のくすり」をもう一度、全国の人にとって身近なもの、なくてはならないものになるように挑戦しています。

『ケロリン百年物語』(監修・笹山敬輔 文藝春秋)
