勉強会を契機に始まった
中小8社の共同開発
転機が訪れたのは、後継者育成講座で知り合った中小企業8社の経営者と継続的に行っていた生産管理システムの勉強会だった。「中小企業にちょうどいい生産管理システムがない。市販のものは高価過ぎる」。皆が同じ悩みを抱えていた。
8人の社長は、「自分たちのような規模の会社が使える理想の生産管理ツールを自分たちで作れないか」と話し合った。そして、中小企業の業務改善に取り組む静岡大学情報学部の田中宏和教授と出会い、歯車が動きだす。
05年に8社が共同出資し、生産管理システムの開発と販売を行うための会社、PROFECT(プロフェクト)を設立。田中教授が理事長を務める一般社団法人システムコラボ・マネジメントとの共同開発をスタートさせた。
しかし、道のりは険しかった。生産管理システムは製造業の基幹システムであるため、エラーがあれば全作業が止まってしまうリスクがあり、試験的に導入するということも簡単にはできなかった。そうこうしているうちに、08年にはリーマンショックが起き、広島メタルワークをはじめメンバー企業の多くが危機的状況に追い込まれたが、ギリギリで持ち直した。
それでもようやく総合生産管理システム「TED」が完成。17年に広島メタルワークに導入された。PC端末は現場と事務所に計55台、現場の全従業員の作業場に1台ずつ設置された。
全員が自分専用の端末を持てるようになったため、従来のように図面をプリントアウトする必要はなくなった。3Dの図面がモニターに表示され、拡大もできるため、細部まで図面を確認でき、ミスは減り、上長や事務所に不明点を確認しに行くこともほとんどなくなった。作業が終われば自分の端末に「完了」と入力して、次の業務にすぐに取り掛かれる。その場から離れることがなくなった。

「このリアルタイム性がとても大きい。1日5分の無駄がなくなるだけで、年間で2.5日分の労働時間が削減できるんです」と前田社長は話す。
さらに、TEDに組み込まれた、製品ごとに過去に不良品が発生した工程をアラート表示して注意喚起する仕組みによって、不良率が大幅に減った。