アサヒビールとサッポロビールが、コロナ禍で拍車が掛かったビール需要減を受けて工場を閉鎖した。次の閉鎖候補となるビール工場はどこか。特集『ビール完敗』の#3では、大手4社の生産体制と工場の稼働率を解剖し、生産体制のリストラに着手していないキリンビールとサントリーの「再編候補シナリオ」を予測した。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
アサヒ神奈川工場が23年1月末閉鎖
ビール工場閉鎖ドミノ発生中
ビール工場閉鎖でふるさと納税が大ピンチ――。
神奈川県の自治体で、ふるさと納税の寄付額が3年連続で県内トップだった南足柄市。しかし、アサヒビールの工場閉鎖で、収入の先細りが懸念されている。
南足柄市はアサヒビール神奈川工場の“お膝元”だ。ふるさと納税の返礼品は「地場産品に限定する」という規制がかかった2019年度以降も、「スーパードライ」などアサヒの商品を返礼品として提供できたことで、人気を集めた。同市によれば、21年度のふるさと納税による歳入29.2億円のうち、69%に当たる約20億円がアサヒの返礼品に関するものだった。
ところが、神奈川工場は23年1月末に閉鎖。南足柄市のふるさと納税の返礼品から、アサヒの商品は消えた。
神奈川工場は02年に操業を開始し、アサヒの国内8工場内では最も新しい工場だった。工場の閉鎖で、ふるさと納税の歳入減に加え、雇用の縮小や工場見学する観光客の減少など、地元経済は冷え込む。「新しい工場だったのにもったいない」と惜しむ声が地元では相次いでいる。
アサヒは神奈川工場に加えて、四国工場も23年1月末に閉鎖した。また、サッポロビールも仙台工場のビール類製造設備を22年12月末に停止し、23年10月にRTD(READY TO DRINK)と呼ばれる缶チューハイや缶カクテルなどの製造設備にラインの切り替えを行う予定だ。
ビール大手による「工場閉鎖ドミノ」を招いた一因は、新型コロナウイルスの感染拡大で加速した“ビール離れ”だ。
アサヒとサッポロが工場閉鎖に着手したことで、業界で注目が集まるのは、未着手のキリンビールとサントリーの動向である。両者の工場再編はどんなシナリオで進む可能性があるのか。閉鎖される工場はあるのか。
次ページでは、関係者への取材で判明した大手4社の工場の「稼働率」と共に、キリンとサントリーの再編シナリオを予想する。また、すでに工場閉鎖を行ったサッポロの次の閉鎖候補も浮上した。