ビール完敗#12Photo:Roydee/gettyImages、Koyo Yamamoto

アサヒグループホールディングスは2016~20年に、欧州と豪州で2兆円超を投じる大型買収を進めた。その結果、16年には10%に届かなかった事業利益の海外比率は、70%超にまで急拡大した。次にアサヒが狙うのは「北米市場」だ。特集『ビール完敗』の#12では、海外戦略のキーマンである朴泰民取締役が、北米攻略に向けた“3本の矢”を明かした。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

大型M&Aの欧州・豪州事業好調
ドライとペローニ「2030年グローバルトップ10」目指す

――2016、17年に計1兆2000億円で欧州事業、20年にも1兆2000億円で豪州事業など、海外で大型M&Aを行い、今ではアサヒグループホールディングス(GHD)のけん引役となっています。

 足元で、海外事業は好調です。

 22年12月期第3四半期決算では、欧州と豪州共に増収増益を達成しました。22年1~9月の業務用・家庭用合計の販売数量は、19年比で欧州が3%減少、豪州が1桁台後半の増加となっています。欧州は新型コロナウイルス感染拡大前とほぼ同等の水準にまで戻り、豪州はコロナ禍前を超えています。

 原材料価格が高騰する中でも、増収増益を達成できた要因は「値上げ」が大きい。欧州や豪州では、コロナ禍前から消費者物価の上昇に合わせて値上げしてきました。そして、過去に比べて「値上げ幅」が大きいのです。それができたのは、(各国での市場シェア等も含めた)「体力」があったことでしょう。ちなみに、競合他社も値上げしたことで、販売量にはそれほど影響がなかったです。

――海外事業では、比較的高価格帯で勝負する「プレミアム化戦略」を進め、「グローバルプレミアムブランド」として5ブランドを掲げます。

 五つのブランドの中でも、「2トップ」と位置付けるのが、スーパードライとペローニです。ハイネケンが世界中どこにでもあるように、この2ブランドは特に世界展開を強化していきます。2ブランドの定量的な目標は、30年までに「グローバルトップ10ブランド」に入ること。今は共に、トップ10圏外です。

 スーパードライについてざっくり言えば、30年には日本での販売数量(22年は6888万箱)と同じ量を海外で販売するイメージです。ラグビーワールドカップ2023 フランス大会のスポンサーになるなどして世界展開を強化します。

欧州と豪州が好調なアサヒGHD。次に狙うのが、北米市場だ。スーパードライとペローニの「グローバルトップ10ブランド入り」でもカギを握る。しかし、アサヒGHDの北米市場戦略の全体像は、これまであまり明らかにされていない。次ページ以降では、朴取締役が北米攻略“3本の矢”について激白した。