関税地獄Photo:Oscar Wong/gettyimages

トランプ政権が導入した一連の関税措置が、日本企業に重くのしかかっている。とりわけ鉄鋼や自動車など品目別関税の強化により、製造業の打撃は深刻だ。こうした局面を受けて、ダイヤモンド編集部は最新決算を基に関税リスクの高い企業を分析。特集『関税地獄 逆境の日本企業』では、関税打撃度を可視化した249社ランキングを4本配信していく。第3弾は、「米国で稼ぐ」企業ワーストランキングを公開する。(ダイヤモンド編集部編集長 浅島亮子)

トランプ関税打撃ランキング第3弾!
米国での稼ぎが多い企業249社をランキング

 6月17日、カナダ西部で開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)。その場で、石破茂首相はトランプ米大統領との首脳会談に臨み、日本に課された関税見直しを強く求めた。

 だが、石破首相が「今なお双方の認識が一致していない点が残っており、パッケージ全体としての合意には至っていない」と発言した通り、交渉に成果は見られなかった。石破首相は「自動車は大きな国益だ。国益を守り抜くために最善の努力を重ねる」とし、粘り強い交渉を続ける構えではあるが、国内産業界には失望感が漂っている。

 とりわけ、トランプ関税の影響をまともに受ける自動車関連業界の焦りは強い。

 トランプ関税は、大まかには4種類に分類される。一律関税(全ての輸入品に一律10%)、相互関税(日本には上乗せ分14%を含み24%)、国別関税(カナダ・メキシコや中国などが対象)、そして品目別関税(鉄鋼・アルミ製品、自動車・自動車部品など)だ。

 特に国内産業界で懸念が高まっているのは自動車関連関税だ。同じ品目別関税では、6月4日に鉄鋼・アルミニウム製品に対する追加関税が25%から50%へと引き上げられたばかり。自動車関連関税では、4月には完成車に、5月には部品にそれぞれ25%の追加関税が発動されている。

 さらにトランプ大統領は、これらの自動車関連関税が米国内への投資を呼び込んでいるという“実績”を主張し、追加関税の一層の強化に含みを持たせている。あたかも、製造業の米国回帰をもたらす“最大のターゲット”に自動車を据えているかのようだ。

 一方の日本側にとっては、あらゆる関税メニューの中でも、自動車関連関税の撤廃・見直しを勝ち取ることが最大のミッションだ。さらなる関税引き上げを辞さない米国と、撤廃を求める日本とで折り合えるはずもなく、交渉は厳しい局面を迎えている。

 ダイヤモンド編集部では、自動車を含む製造業を中心とする249社を対象に、トランプ関税によって大きな打撃を受ける懸念のある企業を分析。最新の2024年度決算を基に関税の影響度を可視化した四つのランキングを作成した。監修は、東海東京インテリジェンス・ラボのシニアアナリスト杉浦誠司氏によるものだ。

 四つのランキングは以下の通りだ。

〈1〉「24年度の米国事業の売上高構成比」のランキング《6月16日配信》

 米国事業への依存度の高い企業はどこか。連結売上高に占める米国事業の構成比に着目。どの企業が米国市場を最大の稼ぎ頭としているかをランキングした。関税の影響のダイレクトに受けやすい企業を抽出した。

〈2〉「米国事業の売上高構成比の変化」のランキング(18年度vs 24年度)《6月18日配信》

 コロナ後に米国依存を強めた企業はどこか。18年度と24年度の6年間で、米国事業の売上高構成比がどれだけ伸びたかを可視化。ポスト・パンデミックの需要拡大や現地生産シフトを進めた企業がランクインした。

〈3〉「米国事業の売上高(絶対額)」のランキング《本稿》

 米国で最も稼いでいる企業はどこか。24年度の米国事業売上高を金額ベースでランキング。売り上げ規模の大きさ=市場の存在感を示す指標とし、関税影響を予想した。

〈4〉「米国事業の売上高(同)の変化(18年度vs24年度)《6月20日配信予定》

 コロナ後に米国事業を大きく伸ばした企業はどこか。18年度と24年度の6年間で、米国事業の売り上げ規模をどの程度増やしたのかをランキング。急成長した企業ほど関税の打撃リスクが大きくなる。

 本稿では、第3弾として「米国事業の売上高(絶対額)」でランキングした。米国での稼ぎが多い企業ほどトランプ関税の打撃を受けることになる。

 上位には、逆風が吹く自動車関連企業が集中した。次ページで、ワーストランキングの順位を明らかにしていこう。