ホンダ三部社長会見写真2030年度までのEV関連投資を3兆円減額すると発表したホンダの三部敏宏社長。PBR1倍割れへの焦燥も見える Photo by Koyo Yamamoto

ホンダが2030年度までの電気自動車(EV)投資の3兆円減額を発表した。背景には、EV販売が想定を下回っていることに加えて、トランプ大統領によるEV普及策の撤回方針がある。しかし、今回の発表の裏では、ホンダが株式市場から問題視されている「PBR0.5倍」の焦燥が見える。ホンダの三部敏宏社長が打ち出した“挽回策”とは。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

EV需要減速に、トランプ氏の石油回帰が追い打ち
見直し迫られるホンダのEV投資計画

 ホンダの電気自動車(EV)戦略が、仕切り直しを迫られている。

 同社は2040年までに新車販売の全てをEVと燃料電池車(FCV)にする長期計画を掲げているが、足元のEV減速などを踏まえ、投資計画を見直すことになった。

 具体的には、30年度までのEV投資を10兆円から7兆円に減額する。同社の三部敏宏社長は、30年度までにソフトウエアやバッテリーなどで10兆円の投資を表明していた。しかし、次世代EV専用工場の設立後ろ倒しなどで3兆円減額することになった。

 EV投資減額の背景には、足元のトランプ関税による市場の不透明さに加え、想定よりもEV普及が遅れていることがある。ホンダは、30年度までに四輪販売台数に占めるEV比率を30%と想定していたが、今回20%程度に下方修正した。また、アメリカのトランプ大統領が、バイデン前大統領が推し進めたEV普及策を見直す方針であることも影響している。

 あるホンダの技術者は、EV投資減額について「状況を踏まえれば、当然ですね」と唇をかむ。

 しかし、今回の決断の裏には、株式市場からホンダが問題視される「PBR1倍割れ」の焦燥も見える。

 PBR(株価純資産倍率)は、株価が1株当たり純資産の何倍かを示し、1倍未満であれば理論上は「会社を解散し、財産を株主で分け合うほうがよい」とも言える指標だ。

 東証もPBR1倍割れを問題視している。ホンダのPBRは0.50倍(5月26日終値)で、三部社長も「非常に厳しい状況」と認める。

 実は今回修正したEV投資減額は、PBR1倍割れ解消にもつながる側面があるのだ。

 一体、どういうことか。0.5倍に沈むPBRの「挽回策」を三部社長自ら明かした。