工場で働く産業用ロボットの世界四大メーカーの一角を占める安川電機は、各国の設備投資の実態を正確に知る立場にある。特集『総予測2025』の本稿では、安川電機の小川昌寛社長に、中国や米国市場の見通しや、ライバルとして台頭してきた中国のロボットメーカーにいかに勝つか、などを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
2025年は米国での設備投資に期待も
全体の景況感は、視界不良
――2025年の景気はどうなりそうですか。
傘を差さずにゴルフはできそうですが、雨が少し降っていて気が晴れない、そういう状況が続いている感じです。
そうなる理由は複雑なのですが、あえて言えば、コロナ禍が明けて(生産活動を)回復させたものの、結局、ちょっとやり過ぎて需給バランスが乱れたということだと思います。
かつてのスマートフォンのようなけん引役が不在であることが不透明感を増しています。AI(人工知能)向け半導体の需要があるのは救いですが、それだけで盛り返せるものではありません。
――米国が関税率を上げようとしています。
トランプ大統領の就任は大きな刺激になりそうです。ただ、関税の話は一方から見れば悪化要因ですが、反対側から見ればそうでもない。結局、必要なものは必要なので、どこかが悪くはなるかもしれないけど、別のどこかは良くなることだって当然あるわけです。
ただ、全面的にインフレになってしまうと、消費が停滞するなどして悪い方向に行ってしまうので、そうならない程度にコントロールしてもらいたいです。
――中国の内需が弱く、過剰生産された製品が東南アジアの日系メーカーのシェアを奪っています。
それは当事者というよりも、客観的に見て実感しています。ただ、中国の内需の勢いがないから輸出を拡大する動きは、ある意味、日本もやってきた歴史がある。(成長する国が)通っていく道だと思います。
今後、東南アジアでEV(電気自動車)のインフラが整ってくれば、中国の自動車メーカーのシェアは拡大しそうです。これまでは日系メーカーによる寡占に近い市場でした。その状態が安泰ではなくなってきているのは間違いありません。
次ページでは、小川社長に、ライバルとして台頭してきている中国の深圳市匯川技術(イノバンス・テクノロジー)への評価や、どのようにシェアを維持、拡大していくかなどを語ってもらう。