
投資家にとって、企業の配当額は投資判断に直結する大きな指標だ。一方で、配当額は企業の資本政策にも左右されるため、必ずしも企業の“実力”通りに配当が実施されるとは限らない。では、その実力に即した配当額とはいかほどなのか。今回、さまざまな経営指標から、独自に各社の「理論配当額」を推計。実際の配当額との差をランキングにした。特集『5年後の業界地図2025-2030 序列・年収・就職・株価…』の#21では、電子部品・半導体業界28社の理論配当額との乖離額ランキングを公開する。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
「配当の実力値」を独自推計!
電子部品業界の「本当の高配当企業」は?
投資家にとって、企業の配当額は投資判断に直結する大きな指標だ。ガバナンス改革などを背景に、株主還元を意識する企業が増えており、累進配当の導入や配当性向アップなどをアピールする事例も増加している。
一方で、配当額は企業の資本政策にも左右されるため、必ずしも企業の“実力”通りに配当が実施されるとは限らない。配当よりも成長投資を優先する企業や、内部留保の確保を重視する企業も存在するためだ。
では、それぞれの企業の配当額の“実力”とはどれくらいなのか。そこで今回、純利益やPBR(株価純資産倍率)といったさまざまな経営指標を基に、重回帰分析によって独自に各社の「理論配当額」を推計。実際の配当額がどれくらい上回っているのかを算出し、その乖離額をランキングにした。
この理論配当額は、同じような企業規模や“スペック”の企業の水準を考慮した、いわば「妥当な配当額」とも呼べるものだ。ランキングを見れば、単純な配当性向の比較だけでは分からない、企業のスペックに対して配当を多めに出しているといえる「本当の高配当企業」の存在がくっきりと浮かび上がる。
一方で、乖離額がマイナス、つまり理論値よりも配当額が低い「配当出し渋り企業」の存在も浮き彫りとなる。だが、それは裏を返せば「配当ポテンシャルの高い企業」ともみることもできる。企業の方針変更次第では、それだけ配当を増やす“余力”があると考えられるからだ。
では、理論配当額との差が大きい企業はどこなのか。今回は、電子部品や半導体関連の製品を手掛ける電子部品・半導体業界28社のランキングをお届けする。
半導体業界を俯瞰すると、生成AIなどの台頭から持続的な先端半導体の需要の高まりが期待されている一方、足元では製品領域によって業績の濃淡が生じている。例えば、EV(電気自動車)市場の鈍化などを背景にパワー半導体市場が軟調で、ルネサスエレクトロニクスは、協業する米ウルフスピードの経営破綻に伴い、2350億円の損失を今期に計上した。
また、自動車関連市場の不調は電子部品企業にも影響を及ぼしており、京セラは25年3月期の純利益が前期比76%減となる240億円と苦しい業績となった。
そうした中でも、実力値よりも高い配当を行っているのはどの企業なのか。東京エレクトロン、村田製作所、京セラ、TDK、ルネサス、レーザーテック、ミネベアミツミ、アルプスアルパイン、太陽誘電、イビデン、ホシデン、日本セラミック……。各社の順位と理論配当額を一覧で確認していこう。
また、ランキングでは、アナリスト予想を基にした3期後の配当性向も掲載している。これを見れば、配当がどの方向で推移しそうかもチェック可能だ。次ページで、ランキングの詳細を公開する。