その次に当代の柳田悠岐がくる。

 1980年頃から平成にかけての強打者は全員、順位を大きく落としている。この時代になるとドラフトによる戦力均衡が進み、各球団に強打者が分散して打撃のレベルが上がってきたために、リーグ打率も上がってしまったのだ。

 このあたり、かの古生物学者グールドの観方(編集部注/スティーヴン・ジェイ・グールド『フルハウス 生命の全容』の著書の中に書かれていた自説。打者の「技術」が一定方向に収斂されて、向上した結果、かつてはいろいろな打ち方の打者がいたが、次第に優秀な打者の技術を真似する選手が増え、打者の「標準偏差=実力のばらつき」は小さくなった。つまり、昔のほうが傑出しやすい)を補強している。実際には1位のリーは14位にまで落ちてしまう。

 規定打数未達の2人もつけておいたが、イチローもNPB時代は平成の強打者だったから、打率は大きく下落したが、もともとが驚異的な高打率だったから、それでも.341という異次元の数字で1位にいる。ローズは8位だ。

もし生まれた時代が違えば
打率4割を打てた選手がいた!

 TBAは、通算記録だけでなく、シーズン記録でも適用が可能だ。この補正値でシーズン打率20傑を出すと図2の表になる。

「王貞治でも村神様でもない」TBA補正した歴代ホームラン王ランキング、驚きの1位は?
図2 同書より転載 拡大画像表示

 4割打者が2人出ていることになる。1938年秋の巨人、中島治康は史上初の「三冠王」を記録。打率も4割を超えていたのだ。しかしこの中島を含め、網点がついている5例は、すべて試合数が100試合以下だったシーズンのものだ。打数、打席数が少なければ、4割はより容易になる。これは「参考例」とすべきだと思うので、それ以外の15傑も加えた次第だ。

 史上最多安打の張本勲、巨人の川上哲治、与那嶺要と戦後から昭和中期の打者が並ぶ。この時期は戦力差が大きくリーグ平均打率は低かった。だから傑出度が高かったのだ。

 史上1位のバースの記録は9位、2位のイチローは14位になる。

 注目は20位に2022年の日ハム、松本剛が入っていること。実はコロナ禍の2020年以降、NPBは両リーグともに異常な「投高打低」が続いている。