それぞれがお互いを尊重して、寄り添い合って生きる。

 それこそ、夫婦のあるべき姿であると言えるのではないでしょうか。

「夫の愛を実感できない...」
ボヤく妻へのとっておきの言葉

 ある研修会でも「夫から愛されている実感がないのです」という相談を受けたことがあります。

 確かに、パートナーに愛されていないと感じるのは、一緒に生活していてつらいこと。

 けれども、禅の教えでは、まずは自分を見つめることを大切にしています。

 そのため、愛されていないと感じるのであれば、まず自分はしっかりとパートナーのことを愛しているかも、改めて見つめ直さなければいけません。

 仏教では、欲しがるのではなく、まずは与えることを大切にします。

 まずは自分が愛する気持ちと行動を与えられているか。

 相手から見返りを求めると苦しみが生じてしまうので、それを求めずに自分が与えているかを考えなければなりません。

 たとえば、記念日などにプレゼントを贈ったとします。

 もちろんその場は相手が喜んでくれて、自分もとても嬉しい気持ちになるでしょう。

 しかしながら、ついそのお返しを期待してしまうと、そこから苦しみが生じてしまいます。

 自分の贈ったものにたいして、相手が期待通りのものを返してくれなかったら。

 そもそも、自分へのプレゼントがなかったら。せっかく相手を喜ばせて、自分も幸せを得ていたのに、見返りを求めることで、それが苦しみに変わってしまいます。

 本来は相手に喜んでもらうためにプレゼントを贈っているはずなのに、プレゼントを贈ることで自分が喜ぶことを求めてしまうと、苦しみが生まれてしまうわけです。

 そもそも、相手が自分の期待通り動いてくれることほど、わがままな考え方はありません。

 まずは自分が与えてみて、その見返りは求めない。

 そこに、実は自分が幸せに生きるヒントがあるのです。

 仏教が大切にしている教えに「刻石流水」という言葉があり、「受けた恩はどんな小さくても心の石に刻み、施したことはどんなに大きくても水に流しなさい」と説きます。