(3)30年に渡り蓄積されてきた既存政治への不信や不満(主に所得低迷、税・社会保障負担増、最近の物価上昇などの経済政策)の矛先が外国人に向かった。
筆者は、これら3つの要因には概ね賛成です。サイバーカスケードやエコーチェンバーなどのネット空間ならではの落とし穴もこれに輪をかけ急拡大したのだと思います。
しかしながら、今後日本で、この議論の質を高め、ビジョンを定め、具体策を進めるには、これら3つの要因の根底にある日本ならではの要因を考慮に入れる必要があります。それは日本(人)の歴史的、地政学的、文化的な側面からくる次の3つの抜本的要因です。
抜本的要因1
外国人(異文化)と接し交わる機会が少ない
大多数の日本人は、外国人と接する、または、異文化環境下で生活する機会が著しく限られています(以下、これを示す主なデータ)。
●220年の鎖国後も在留外国人の対人口比は低い(数値は前述)
●外国人と接する機会があっても、英語の壁により外国人と直接対話しない(EF英語能力指数国別ランキングで日本は113カ国中87位など)
●民族多様性は、世界188カ国中187位と北朝鮮に次いで低い(World Population Review-Goren2023)
●人口に占める有効パスポート保有者率は16.8%(2025年2月時点、外務省)。アメリカ5割、韓国4割、台湾6割(日本旅行業協会)、欧州諸国3~8割と比べて圧倒的に低い
これにより、外国人を偏見やステレオタイプを通して見ることが多くなります。その結果、一部の外国人によるマナー違反や犯罪、また、国内問題(経済低迷、家計悪化、治安悪化など)による不安と不満の矛先が外国人に向けられ、移民の排斥、制限、差別につながる危険性も高くなります。
特にその矛先は、中国人に向かう可能性が高まります。理由は3つです。1つは、複雑な日中関係(歴史・地政学・政治体制や文化的な違いによる)。2つ目は、非好意的な国民感情(日本人の87.7%が中国人に親しみを感じていない―内閣府「外交に関する世論調査2024年10月」)。3つ目は、その中国人が最大の入国者という事実です(移民、インバウンド旅行者、留学生など)。