移民政策を考える上で
重要な3つのこと

 こうした中、少子高齢化、人口減少、相対的な経済縮小、国際的プレゼンスの低下が同時進行する日本は今後どのような移民政策をとるべきか?

 この問いに対して、まず重要なことは、前述の要因を踏まえることです。先の参議員選で移民受け入れ問題が盛り上がった理由としてあげた、少数なりとも未曽有の移民急増(直接的要因)、昨今の日本の社会・経済・政治情勢と絡めた国民心理からくる3つの要因(連鎖的な増幅要因)、その根幹にある日本と周辺国の歴史・地政学・文化的な側面からくる3つの要因(抜本的要因)です。

 次に重要となるのは3つです。1つは、国家ビジョンと中長期戦略の明確化、2つ目は、日本へのインテグレーションプログラム、3つ目は、日本人向けの多文化共生に関する啓蒙と教育です。これらは、移民は今後無期限で一切入れませんと鎖国政策をとらない限り、その受け入れ規模にかかわらず最低限必要なことです。

 以下、これら3つについて解説します。

【国家ビジョンと中長期戦略の明確化】

 まず、移民政策の土台となるビジョンと戦略が必要です。ビジョンとは将来あるべき国の姿です。10年後、50年後、100年後にどのような国でありたいのかということです。この長期的な国家像に基づいた移民政策でないと、場当たり的な対応で終始してしまいます。

 次に、そのビジョンが定まったならば、それに沿った移民の受け入れと持続的な多文化共生性社会づくりに向けた戦略が必要です(以下、ポイント)。

●そもそも移民受け入れの目的は(生産年齢人口の増加、消費活動の活性化、税収拡大、新産業やスタートアップの創出、国際競争力の強化、新しい価値観や創造性を生みだし社会を活性化、国際社会への理解を深め偏見や差別を解消、地方人口の減少に歯止めをかけ地方活性化、国民による自国文化の再発見と必要に応じた見直しなど)
●どのような入国滞在資格の外国人を、どの程度(人数)招くのか
●参政権を与えるのか、また、その条件は(参考:欧州では非EU圏の外国人居住者に対し、国政選挙の投票権を与える国はない。理由は、2重の国際投票権の回避と外国諸国の選挙介入を防ぐなど。他方、地方選挙の投票権は無条件または条件付きで19カ国が付与)
●社会保障の適用条件は(参考:フランスでは、欧州以外の国籍でも合法滞在する外国人は、フランス人と同じ条件で、全ての社会保障を受けられる。健康保険、年金、生活保護手当、家族手当、教育補助、失業手当、職業訓練、住宅手当、障害者手当など)
●どのようなタイムラインで、どの程度のリソースをかけるのか(予算と人員)
●どのような体制で受け入れ支援してゆくのか(国、地方自治体、企業、非営利団体間の連携も含め)
●どのような国際協力体制を築くのか(移民は国際問題であり他国や国際機関との連携と調整が必須)
●政策の策定と実行の過程での市民参加の仕組みをどうするのか(市民参加型ワークショップ、フォーラムの常設など)