進化を止めた「伝統的日本企業」は
「過去の遺物」になる!?
会社を永続組織(Going Concern)ととらえるのは、会社法や会計学上の概念操作にすぎない。会社は、言わば「進化組織(Evolving Concern)」でなければならない。進化し続けない限り、確実に滅びる。そう考える柳井氏は、2011年に「Change or Die」をコーポレートスローガンとして掲げた。
日本は、世界有数の長寿国だ。企業の長寿ランキングでも圧倒的な世界一である。しかし、数百年の歴史を誇る企業の実態を見ると、実は何度も生まれ変わり続けている。先に紹介した中川政七商店はその好例である。デジタル時代の到来とともに、変化のスピードは加速度的に高まっている。TJCも進化のアクセルを踏み続けない限り、「過去の遺物」となることは必至だ。
会社の側から人の側へと視点を移すと、さらに事態は深刻になる。いまや、転職は当たり前。特定の企業に縛られず、個人として独立して仕事をする人も増えている。いわゆる「フリーランサー」族である。兼業や複業も加えると、その数はうなぎのぼり。
人材サービス業のランサーズの調査(「新フリーランス実態調査 2021-2022年版」)によると、2021年の時点で、日本でも5人に1人以上が広義のフリーランサーになっているという(下図参照)。コロナ禍が明けてからも、その数字は増加の一途をたどっている。
柳井氏は前掲のインタビューの中で、「副業が広がるなど企業と個人の関係が変わり、会社はプロジェクトのたびに人が集まる組織になる可能性もあるのでは」という本質的な問いに、次のように答えている。
「僕は副業には反対。だけど個人が会社を選んで、会社が個人を選ぶ対等な立場だという関係になっていくと思う」
筆者がファーストリテイリングの社外取締役をしていた10年間、柳井氏とは本件についても何度か意見を交わしたことがある。それから数年が過ぎ、いまや「対等な関係」すら崩れ、会社は選ばれる時代になっている。いつまでも副業に反対していると、優秀な人財から背を向けられることになるだろう。