老年的超越とは、1989年にスウェーデンの社会学者ラルス・トルンスタム氏が提唱した85歳以上の高齢者が持つ心理状態です。
簡単にいうと、人生の終盤を迎えたヒトは、死との物理的な距離が短くなっているにもかかわらず、落ち込んだりしていることはなく、逆に自己肯定的で他者に対する感謝や利他的な精神にあふれてくるというものです。
それまでの物質主義的で合理的な世界観、つまりどうやったら効率的に仕事ができるか、利益が得られるか、競争に勝てるかなどの世俗的な欲望からも解放されるというのです。
のび太のおばあちゃんは
究極の幸せをつかんでいる
わかりやすい例では、ドラえもんの「のび太のおばあちゃん」のような性格でしょうか。
縁側に座って猫を撫でながら庭の草木を眺めている。よく知らない人が訪ねてきても、優しく招き入れお茶を振る舞い、話を聞いてあげて励ます、そんな幸福感に満ちた穏やかで利他的な「いい人」です。
ただ気をつけないといけないのは、「オレオレ詐欺」ですね。高齢者がオレオレ詐欺の被害に遭うのは、認知能力の問題ではなく、高齢者の持つ心理的な特性が関係しているのです。
ヒトを疑うことをしないで助けようとしてしまうのです。これについては、周りの人が気をつけてあげないといけませんね。
なぜ超高齢になるとこのような利他的・自己肯定的な心理状態になるのでしょうか?これはあくまでも私の想像ですが、長く生きていろんなことを経験して、「やり尽くした感」があるからだと思います。
人生に悔いはなく、いつ死んでもいいという心境に達したと言ってもいいかもしれません。言ってみれば人生という一大イベントの「打ち上げ」の時期なのです。
「死からの距離感」から「幸せ」を測ると、超高齢者はめちゃくちゃ近いです。しかし、死に対する恐怖から解放されている超越者にとっては、「死からの距離」と「幸せ」の間にもはやなんの関係もなく、究極の幸せを手に入れている状態ともいえます。ここまで生きるのが1つの人生の目標だと私は思っています。