スマホを使っていないのに
その弊害は消えてくれない
さらに悪いニュースとして、タークルが危惧する以上のことが起こっています。つまり、スマホを通じて注意を分散することに慣れた私たちは、スマホを使っていないときでさえ、気もそぞろで対面のやりとりをしているらしいのです。
いくつかの研究が示唆するところでは、スマホを触っていなくても、そこにスマホがあるという事実が、対面の会話に影響を与えている可能性があります。具体的には、スマホがあるだけで会話での共感レベルが下がり、話題がスマホに左右される恐れがあり、自他の感情や心理状態への注意が削がれかねないのです。
恐らくこの背景には、注意の分散があるのでしょう。1つのことに十分注意を向けて、それについてあれこれ考える習慣そのものが衰退しているのだとすれば、やはり〈孤立〉が重要になってきます。ここでいう〈孤立〉とは、気を散らされる事態から距離をとることです。
いろいろな事柄や相手に注意が分散しているわけですから、対面での会話が作業するようにこなされてしまうのは当然です。反射的なコミュニケーションで自分を取り巻くことは、相手の人格や心理状態を想像しないようにと日夜練習を積み重ねているようなものです。
マルチタスク化した生活がもたらす〈孤立〉の喪失は、なかなか問題がありそうです。
