商品の完成度において
妥協しなかったジョブズ
3つの力の中で最もわかりやすいのが商品力です。これが売上と利益の源泉ですから当然です。
では商品力を伸ばすにはどうすればよいか。売れるものを作ればいいだけでは、と思われるかもしれませんが、すでに多くの商品がありながら常に新しい商品も作り出されるという中では、すべてを売れるようにすることはなかなか難しいことでしょう。
まずはひとつひとつの商品の完成度を高める、というのが基本です。商品点数が多くなるとどうしても前例踏襲でこのくらいで売れるだろう、という商品が出てくることも考えられます。そこで妥協せずに完成度をどこまで求めるか、が問われます。
製品の細部までこだわって完成度に妥協しなかった例としては、アップル社のスティーブ・ジョブズの仕事が挙げられます。
確かに商品には圧倒的な完成度があり、群を抜いた商品力を持ってマーケットシェアを取っています。ところが実際に世の中で売られている商品を見ると、そこまで完成度を突き詰めたのか疑問に思ってしまう商品も多く見られるのも事実です。むしろ割合としてはその方が多いかもしれません。
完成度という中には物理的な性能という客観的に理解できる部分だけでなく、味や香りやデザイン性など五感に訴える主観的な要素も数多くあるからで、その完成度の判断は属人的にならざるを得ない部分もあるから難しいのです。
日本企業はスペックを追求することにおいては完成度の高い商品を作ることに成功してきていると言えます。しかし感性的な部分、特にデザイン性についてはまだまだ改善の余地があると感じています。
一方、マンガやアニメのように世界的に支持を得られる素材も多いので、クリエイティビティはむしろ優れているはずです。ファッション業界でも早くからグローバルに活躍するデザイナーを多く輩出しています。
この豊かな感性をもっと一般の商品デザインにも取り込んで完成度を追求することで、グローバルに成長する際の商品開発に大きな武器とすることができるはずです。
そうはいってもすべての商品の完成度を一律に高くするのはなかなか難しいことです。一番完成度を追求した商品がなぜか売上では下位に甘んじてしまっている。あまり期待していなかった商品がなぜか非常に売れている。こういうことは日常茶飯事です。