
ドナルド・トランプ米大統領は利下げを求めてFRBへの“攻撃”を繰り返している。前日本銀行総裁の黒田東彦氏が執筆するダイヤモンド・オンラインの連載『黒田東彦の世界と経済の読み解き方』の今回のテーマは中央銀行の独立性。FRB・ECB・日本銀行が政府からの独立性を獲得した理由とその教訓とは?
政府の中央銀行支配は深刻なインフレを招く
歴史の教訓から生まれた中央銀行の独立性
ドナルド・トランプ米大統領がFRB(米連邦準備制度理事会)に利下げするよう繰り返し圧力をかけたことなどから、「中央銀行の独立性」が議論されることが増えている。
中央銀行は、広い意味の行政の一翼を担う機関であるが、政府には属さない特殊法人であり、特に高い独立性、自律性が認められている。具体的には、金融政策について、政府からの指示は受けず、その決定に携わる総裁など執行部の幹部や政策委員などは、政府から任命されるとしても、いったん任命されれば、正当な理由なくして解任されることはない。
このような中央銀行の独立性は、長い歴史の中で、物価の安定を達成するためには、政府から独立した中央銀行に任せることが適切だという認識が、政府や国民に共有されたからである。
すなわち、政府が中央銀行を支配する下では、歴史上、何度も深刻なインフレが生じたという教訓から生まれた制度であるといえよう。