特に気をつけてほしいのは、マルチタスクで仕事をしている人。職場でも家でも、多くのタスクをこなす必要がある人は、やはり日常的に感じるストレスが強くなってしまうからだ。

 また、夏のうつを発症するリスクには性別の差もあるという。

「夏季のうつ病は、女性よりも男性のほうが比較的に多いです。これは服装などの要因も関係していて、スーツを着る必要がある場合、男性は暑い夏でも長ズボンを履くことが求められる。最近は日傘やハンディファンなどが普及し、暑さ対策をしやすくなったとはいえ、使用に心理的なハードルを抱えている男性もまだまだ多いですよね」

 暑い夏は、多くのビジネスパーソンにとって危険な季節なのだ。

交感神経の高ぶりによる
「過覚醒」に注意

 過剰なストレスからうつ病を発症するキーとなるのが「交感神経」だ。

「人はストレスを感じると、防御反応として交感神経が働きます。交感神経は、心身を覚醒状態に切り替える神経。ストレスによって感じた疲労を覚醒で補おうとするんです。通常は、リラックスすれば副交感神経が働いて、交感神経は収まる。でも、ストレスの多い人は交感神経が高ぶったままになって、“過覚醒”の状態に陥ってしまいます」

 過覚醒状態になると脳がオーバーヒートしてしまい、疲れを解消しきれなくなる。その結果、心身が疲労困憊して「うつ」の状態になっていくのだという。

 では、過覚醒になるとどのような症状が出てくるのだろうか?

「交感神経が優位になって脳が覚醒しているので、眠れなくなります。それに加え、口の乾きや食欲低下、胃もたれ、肩こり、頭痛や動悸(どうき)などの症状があらわれます。あとは、音や人の表情に対する鋭敏化。些細なことにもストレスを感じるようになるので、さらに脳が疲弊していきます」

 食欲低下や頭痛などの症状は、夏バテや熱中症とも似ている。だが、過覚醒による「不眠」は、夏バテの寝苦しさとは質が違うそうだ。交感神経が高まり脳が起きている状態なので、入眠困難をはじめ、小さな物音で目が覚めてしまったり、熟睡できず朝から体がだるいなどの問題が起こったりする。