「普段の自分じゃない」
と感じたら危険なサイン

 こうしたセルフケアを行っても夏の疲労が解消されない場合は、「早めに医療機関を受診してほしい」と立川氏。

「たとえ気持ちが落ち込んでいても、食べられる・寝られる・敏感さもない・動悸もしない、という状態であれば特に問題はありません。ですが、過覚醒の症状に加え、長期間気持ちが落ち込んだまま上がらない場合は、うつを発症している可能性が高くなってくる。うつ病の診断基準として『丸2週間以上抑うつ状態が続く』というものがあります。通常の気分の落ち込みであれば、良いことや楽しいことがあれば気持ちは上がるもの。でも、過覚醒をはじめとした脳に問題が起きている場合は、何をしても気持ちが浮上することはありません」

 また、早い段階で病院へ行くのは治療の上でも大切だという。

「うつになってしまうと、やはり治療がなかなか難しくなってしまいます。ですが、過覚醒の段階で受診してもらえると、休職したり、自律神経の薬を服用して残業を減らしたり、と簡単な治療で改善するケースも多いです」

 ただし、休職をしても、自律神経の薬を使用しても症状が回復しない場合がある。そのうえで、前述した「2週間以上抑うつ状態が続く」という基準を満たした場合は「うつ病」と診断され、抗うつ薬を使用した治療に切り替わるとのこと。とにかく、早期の受診を心がけたい。

「普段から仕事や家庭の問題で負荷がかかっている人は、夏の環境変化によって、負荷が病に移行してしまうことがあります。うつになると頭が回らなくなってしまうので、集中力や判断力の低下が引き起こされる。仕事や生活に支障が出たり、とにかく普段の自分じゃないと感じたら危険なサインです。すぐに医療機関を受診してください」

 明るい太陽に照らされる夏。だが、長く続くこの暑さに「夏のうつ」をこじらせないよう、毎日ストレスを感じながら働いている人たちは十分気をつけてほしい。

<プロフィール>
立川秀樹:パークサイド日比谷クリニック院長
精神科医 医学博士。日本医師会認定産業医、医療法人社団医燎会理事長、医療法人白翔会理事。筑波大学医学部卒業。筑波大学大学院博士課程終了。筑波大学にて学位(医学博士)授与。都内、埼玉、茨城、北海道にて精神科医・産業医として勤務。2002年、ストレスケア日比谷クリニック勤務。2005年、同クリニック副院長。2007年よりパークサイド日比谷クリニック院長。