キーエンス元社長が説く
「経営者の役割」三つ目は…
そして第三に、「集中と分散」のバランスについて、全社レベルで常に目配りすること。一般には、「集中と選択」が経営の定石とされるが、先が読めない時代には通用しない。「勝ちどころ」に集中する一方で、流れが急変しても対応できるように、別のオプションへの手立てを怠らないようにする。
最近の例で言えば、中国市場やEV(電気自動車)に集中しすぎた結果、そこに急ブレーキがかかったことで収益悪化に陥った設備メーカーが少なくない。これに対してキーエンスは、事業ポートフォリオを分散してきた結果、その波を軽々と乗り越えている。
常に現場に軸足を置いて「守」と「破」のリズムを大切にしつつ、必要に応じて大きくピボット(「離」)していく。これが、キーエンス流の経営の極意である。そして、ここにもシン日本流経営の元型、アーキタイプが潜んでいることに気づかされる。
【参考・引用文献】
・※注1 『「キーエンスに過去は不要」色あせぬ滝崎名誉会長の教え』2022年2月21日付『日経ビジネス電子版』より