若手時代に海外留学した官僚が、MBA(編集部注/経営学修士)を取得した後、すぐに退職して外資系の民間企業などに転職する事例が相次いだのである。

 僕自身、1990年から2年間、ニューヨークに公費留学をさせてもらい、知見を大きく広げることができた。大変充実した時間だっただけに、国民の税金で学ばせてもらったことに対する感謝の念は自然と湧いてきたし、帰国後に待ち受けていた激務へのモチベーションにもつながった。

優秀な人材が集まらない現実
東大生の官僚離れが顕著に

 ただ、いまはもうそういう時代ではないのだろう。留学がモチベーションとなって頑張って働き続けるどころか、聞いた話では、数年後に民間企業に転職するのを前提に、行政での経験を積むために霞が関の省庁に入る人もいるらしい。

 いまの霞が関は、若手官僚たちにふさわしい、やりがいのある仕事を提供できているか。そうした問題に十分に応えきれていないことが、最大の原因なのではないだろうか。

 官僚には、この国を良くするために、国民全体の奉仕者として仕事をするという、公僕としての心構えが求められる。しかし、そうは言っても彼らとて人間であり、そこに働く意味を見出すことができなければ、低賃金で奉仕の心だけを求めることには無理がある。

 また近年は、若手官僚が辞めることだけでなく、そもそも省庁が優秀な人材を集められていないという現実がある。あくまでも参考情報だが、2022年度春の国家公務員総合職試験に合格した東大生は217人で、2015年度(459人)の半分以下になった。

 農水省ではある年、東大卒の採用がゼロだったと話題になったこともある。学生に人気のない省庁は、もはや「東大生が来てくれない」という時代になっているのだ。

 僕は「東大卒だから本当に優秀だ」などとはまったく思っていない。なので、東大卒がゼロというのはどうでもいいが、出身大学を問わず、本当の意味で優秀な人材の官僚離れが顕著になっているのは間違いないだろう。

官僚離れの原因は
賃金だけではない

 官僚離れは経済的側面、つまり低賃金が原因であると説明されることが多い。確かにそれは大きな理由としてあるのだが、それが最大の理由なのかと言えば、僕は少々疑問を持っている。