
ロシアの侵略行為、正当化!?
自由貿易推進とは真逆の関税引き上げ
ウクライナの停戦をめぐってトランプ米大統領とロシアのプーチン大統領との初の電話会談が3月18日に行われた。
発電所などのエネルギー関連施設への攻撃停止で合意したほか、今後、黒海での海上停戦や完全な停戦、恒久和平に向けて米国とロシアで協議を進めることが決まったというが、ウクライナや欧州の頭越しにロシアとの停戦交渉開始を合意、その後もロシアに融和的な発言を繰り返すトランプ氏主導の交渉で、ロシアに有利な条件での停戦に持ち込まれるのではとの疑念は消えない。
トランプ米国大統領が主導する世界を見ていると、「何かがおかしい」という強い違和感を持たざるを得ない。
つい先日まで、ロシアのウクライナ侵攻は侵略であり、現代国際法では許されないし、中国の南シナ海における活動は力による一方的な現状の変更で許されない、法の支配が重要だと国際社会は論じてきた。特に主要民主主義先進国は規範を維持すべく国際協調を先導してきた。
それが、である。米国はロシアの侵略を非難する国連決議にロシアと共に反対票を投じた。ウクライナで停戦を実現することは多くの国が支持するが、だからといってロシアの侵略行為が正当化されるわけではない。
貿易政策でもこれまで国際社会が進めてきた流れと真逆の方向で動いている。
トランプ大統領は、自分はタリフ・マンであるとして、貿易不均衡を持つ国々に一方的に高率の関税を賦課すると脅し、現実に適用する。これまで米国の指導力の下で、自由貿易推進のため関税や非関税障壁を引き下げていく国際的努力が行われてきた。それが、である。
トランプ大統領は麻薬防止や不法移民対策、さらには米国の製造業保護などいろいろな理由を挙げながら縦横に関税引き上げを宣言し、EUが米国による鉄鋼・アルミニウム・関税引き上げへの対抗措置を行う意向を表明すると、EU産ワインに200%の追加関税を賦課する乱暴な行動を示唆している。
世界は危うい流れを止めなければならない。