結論から述べますが、1on1は人事業績評価の仕組みを補完するものです。人事業績評価には大きな期待が寄せられる一方で、マネジャーと部下はその仕組みにどちらも不満を感じています。

 部下は評価が不公平で、これまでの行動の積み重ねよりも最近の行動が重視されていると感じています。そして、部下は評価がタイムリーに行われないことも不満に感じており、人事業績評価の面談に対して不安やストレスを経験しています。

 マネジャーもその面談を嫌がることが多く、自分のフィードバックの部下への影響を心配しています。また、マネジャーが評価期間中に起きた出来事をすべて思い出すのは難しく、評価に必要な書類を揃えるまでに時間がかかるという問題もあります。

 1on1はこうした状況を救います。1on1では、事前に部下のパフォーマンスや強みが話し合われるので評価への不安が取り除かれます。さらに、1on1でメモを取れば、それは人事業績評価に必要となる書類を作成するときに役に立つ資料になります。

 記録に残すことで評価をまとめる作業が楽になるだけでなく、最近の出来事に評価が支配されなくなることから、評価精度が向上して部下はフェアに感じます。

 さらに、1on1を定期的に行えば、評価期間中でもコーチングを提供できるので、部下は成長できるようになります。

 このように1on1を活用すれば、人事業績評価のストレスを減らして、その価値を高め、関係者全員がもっと楽しく評価を受けられるようにすることができるのです。このように、1on1には人事業績評価の仕組みを補完する効果があります。

信頼構築を構築することで
部下と組織が育っていく

書影『世界標準の1on1 科学的に正しい「対話の技術」のすべて』『世界標準の1on1 科学的に正しい「対話の技術」のすべて』(スティーヴン・G・ロゲルバーグ著、本多明生訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 そして、1on1にはリアルタイムで変化を生み出し、出来事を記録し、部下をサポートする機能があるのです。

 1on1はマネジャーと部下の信頼関係を築き、その関係を強化するので、人事業績評価は受け入れられやすくなり、その価値も高く評価されやすくなります。

 1on1を定期的に行えば日常業務以外にも大きな成果が得られます。

 例えば、1on1には従業員の成長・能力開発をサポートし、信頼を育み、人間関係の基礎を構築する効果があります。

 さらに1on1は、チームメンバーやあなたの仕事、組織にも大きく影響します。1on1を上手に行えば、部下の仕事やキャリアアップに劇的な変化が生まれる、と言っても過言ではありません。