生前贈与との
組み合わせもできる

 アパート経営は生前贈与と組み合わせることで、さらに相続税対策の効果を高めることも可能だ。アパート経営で得た家賃収入の一部を、毎年少しずつ子や孫へ贈与していくことで、将来の相続財産を減らしながら、贈与税の非課税枠(年間110万円)を有効活用できる。さらに、評価額が下がったアパートそのものを生前贈与することも可能だ。

 アパートがまだ新しく、評価額が低い段階で贈与すれば、将来の相続税の負担を軽減できる。このように、アパート経営はさまざまな税制上のメリットを享受できるため、相続税対策として有効な手段だった。

 しかし、次に触れるとおり、アパート経営は曲がり角を迎えているのだ。

アパート経営はもう古い?
リスクが増えている理由

「アパート経営は相続税対策に有効」という話は、これまで多くの人が信じ、実際にその恩恵を受けてきた。しかし、以前に比べてリスクが増加しており、「もう古い」と言われることが増えていることはご存じだろうか。以下のリスクポイントを必ず理解しておくことが大切だ。

 まず1つ目は「空室リスク」である。少子高齢化や人口減少、そして都心部への一極集中により、地方を中心にアパートの空室率は上昇傾向にある。入居者がいなければ家賃収入は途絶え、ローンの返済や維持管理費が家計を圧迫することになる。空室リスクは都内でも発生しており、悩みを抱えている人は少なくない。

 2つ目は「築年数の経過による賃料低下と修繕費用のコスト増」である。アパートは築年数が経過するにつれて老朽化が進み、家賃を下げざるを得なくなっていく。また、定期的な大規模修繕や設備交換の費用も発生するため、想定外の大きな出費が大家を直撃することも少なくない。修繕費用の積み立てが不足していると、資金繰りが厳しくなるリスクがあるのだ。

 また、円安による資材の高騰で当初想定を大きく上回る修繕費用の請求に頭を抱えるケースもある。

 加えて、3つ目に「低金利時代の終焉」が挙げられる。日本はこれまで過去20年以上にわたって低金利時代が続いていた。低金利は不動産取得においてメリットとも言えたが、円安が進み終焉を迎えつつある。

 金利政策は日銀の動向を注視する必要があるが、仮に今後金利が上昇を続けることになれば、毎月の返済額が増加し、家賃収入だけでは返済が賄いきれなくなるおそれがある。アパート経営の収益性を大きく損なう要因になりかねないのだ。

 ただし、金利上昇はアパート経営者にメリットをもたらすこともある。新たに住宅を購入しようと考えている人々の意欲が、金利上昇によって低下する可能性は高いからだ。その結果、空室率の抑制につながる可能性がある。

 4つ目は「争族リスク」だ。アパートは現金のように均等に分割することが難しい。共有化は可能だが、簡単に売却できなくなる、次の相続の発生により共有者が増えてしまうというリスクがある。共有状態は避けることが無難だろう。