嵩、メイコに口止め
再び、浮気疑惑発生
「日付のない日記」のようなものを書き留めている嵩。「日付のない日記」というワードからして詩のようだ。
詩なの、漫画なの、どっちなの?
第101回のレビューにも書いたが、『詩集 愛する歌 第一集』(72年)でやなせは「ボクは漫画と詩というものを全く同一次元で考えています。ふたつともわかりやすく、人生を楽しくする為に役立つものでなければならないはずです」と書いている。
現在、漫画といえばコマ割りしたストーリー漫画しか思い浮かばないが、やなせたかしは、詩漫画、あるいは漫画詩のような、独自の表現を目指していたのかもしれない。
令和のいま、スマホで読む縦スクロール漫画も生まれていることから、漫画のカタチもいろいろ変化するということであろう。
ただ、昭和40年代はストーリー漫画の時代。登美子(松嶋菜々子)はのぶにお茶をたてながら、「オバケのQ太郎」や「リボンの騎士」など空前の漫画ブームのなかで、嵩はいつになったらこういう漫画と肩を並べる漫画家になるのか、と半ばあきらめ顔。彼女は売れている作詞のほうで活躍してほしいのだ。
ここで例に挙げられている漫画に注目してみよう。
Q太郎は主人公だがかっこよくは全くない。リボンの騎士のサファイアは、凛々しい王子さまの姿をした女性である。かっこいいヒーローが主人公の漫画もこの時代、いくらでも存在していたと思うが、あえてカッコ悪い主人公とジェンダー先取り主人公を挙げているのだ。
その頃、嵩は、例の喫茶店で女性編集者と打ち合わせをしていた。そこでメイコ(原菜乃華)と会うと、嵩は彼女にのぶには言わないでほしいと頼む。当然、メイコは、訝しむ。
それから日が経過して、のぶの誕生日。蘭子とメイコがあんぱんで祝う。蘭子は山登り用の帽子(三星百貨店で買っている!)、メイコは彼女がフランス刺繍したハンカチをプレゼント。
メイコは専業主婦で昼間、ヒマなので刺繍を趣味にしている。いい趣味と言われるが、ヒマを持て余しているようだ。健太郎は忙しくて、さみしい日々を送っていて不満気味。
嵩だって昼間、何をしているかわからない、などと言い出す。
嵩に口止めされたことを話してしまう。こっそり女性編集者と打ち合わせしていると。メイコはすっかり人間の俗っぽいところを引き受けている。
知性的な蘭子、俗っぽいメイコ。ではのぶは? これは後述しよう。
そこへ嵩がちょうど戻ってきた。嵩は以前、歌手とも浮気を疑われている。
そんな嵩が、のぶに差し出したのは――