タトゥーが「やっぱりダメだ」
と言われ始めた理由
しかし、なぜ一時期受容の方向で調整が進んでいたタトゥー観がここに来て一気に否定の方向に進んだか。これは日本人ファーストが刺さった世相にも関係しているように思える。
かつて日本(特に戦後だろうか)はGDPこそ高いものの文化的に劣等感を抱えた国であった。当時は漫画・アニメもゲームも誇れるカルチャーでなく、特に欧米はすべてにおいて日本より垢抜けている気がして、とりあえず彼らのフォロワーであることが日本人をかろうじて美的センスにつなぎとめているような塩梅であった。
しかし近年になるにつれて日本人が自分たちの良さを見直しはじめて、日本独自の文化を世界に誇るまでに自信をつけてきた。外国の価値観に安易に流されない確固たる価値基準を手にしつつあった日本では、かくして自分たちの良さを守りたいという思いがイデオロギーとなって、日本人ファーストを唱えた政党が選挙で躍進したりしたわけである。
さて、日本が海外基準にむやみにへつらわなくていい自信を身につけた結果、今こうしてタトゥーへの風当たりが強くなっている。日本人は、途中ちょっとがんばって受容する努力をしてはみたものの、やっぱりタトゥーは嫌だったのである。このこと自体は、まわりに流されず己の価値観を貫く矜持が感じられるようで、外国の顔色をうかがうばかりの態度よりかは断然好ましく思われる。
ただ、タトゥーを否定する際の論調が、ときに強く偏って人格否定や誹謗中傷にまで及ぶシーンが見受けられる。言及の程度にはいくらか理性的なセーブが必要かな、と思われることもあるので各位注意されたい。
タトゥーは、人に見えるようにしているというだけの状態で威圧や不快を招く迷惑行為になりうるから、入れる人も相応の覚悟(人を不快にさせるかもしれなかったり、それによって誹謗中傷される覚悟)を持ってはいるはずだが、そうはいっても言い過ぎ・やり過ぎにはご用心である。