タトゥーを入れるワクワク感と
引き返せない不安感
さて、ここまで書いておいてなんであるが、実は私もタトゥーが入っている身である。せっかくの機会なのでタトゥーを入れていることによって経験した葛藤や不便などを書き記してみるが、これによってタトゥーへの理解を求めるつもりは毛頭ない。
ただ普段はあまり明かされないであろうタトゥー持ちの本音を、暇つぶし程度に聞いてもらえれば幸いである。そして、その感想が「やっぱりタトゥーは入れるものじゃない」「タトゥー持ちとはわかりあえない」だったなら、ぜひそのご自身の感覚を大切にしていただきたい。
昔やっていたバンドは上半身裸で激しくパフォーマンスするようなステージで、一生懸命筋トレをしていい筋肉を披露するなどしていたのだが、音楽性に対してもうひとつパンチが欲しかった。強いていえばレッチリなどに代表されるミクスチャーっぽいジャンルで、海外の主だったアーティストはタトゥーがすさまじかった。
彼らへの憧れはタトゥーへの憧れにもリンクし、私も背中に大きめの、飼い犬と『サタデーナイトフィーバー』のトラボルタをモチーフにしたシンプルなトライバルデザイン(幾何学模様)のものを2つ入れた。
タトゥーを入れることによる引き返せない不安もないことはなかったが、それよりもワクワクの方が強かった。感覚的にはピアスの穴を開けるのと同じである。タトゥーの方が過激でリスクが大きいというだけで、自分の体をファッションのために不可逆の方向にいじるという点において、タトゥーもピアスもためらいの質は変わらない。
入れてみると一線を越えた気がしてステージに一層熱が入った。なお、腕にも入れるか迷ったのだが背中だけに留めた。見えるところにタトゥーを入れて道行く人に「どう?」みたいなことをしたい気持ちも少しあったのだが、人に唐突な威圧感・不快感を与えるのを避けることを優先させた。
結果的に「Tシャツを脱ぐステージ上だけで限定的にお披露目されるタトゥー」という特別感で、自分の気持ちをブーストさせる効果があったように思う。