これは、「フェイシャル・フィードバック」と呼ばれる心理作用で、実際に多くの研究でも報告されています。

 たとえば、米国カンザス大学のタラ・クラフトは、箸を口にくわえて笑顔の形をつくるだけで、ストレスが緩和されることを実証しました。

 表情が感情をつくり出す。これは、思っている以上に強力な心のテクニックと言えるでしょう。

 うまくいかないとき、感情を変えようとするのは心理学の専門家であっても難しいものです。でも、表情や言葉なら、本心とは違っていても手軽に変えることができます。

 心は怒りで真っ黒でも、口角を上げるだけで、脳は「笑っているんだ」と錯覚してくれます。どん底の気分でも、セリフを読んでいるつもりで「最高、幸せ」と口に出すことは、そう難しくはないはずです。

 イライラしたときこそ、あえて笑顔をつくる。気分が乗らない日ほど、「幸せ」と口に出してみる。

 その逆説的な習慣が、気分を落ち着け、トラブルを遠ざけ、毎日をやわらかくしてくれます。

 言葉と表情を少しだけ意識してみること。それは、誰にでもできる心の整え方です。

 続けるうちに、性格もだんだんとやわらかくなり、やがて意識しなくても、自然と笑顔や明るい言葉がこぼれるようになります。

“愛され実感”を得るために
自分から動いてみる

 1996年から4年間にわたり、カナダで大規模な全国人口健康調査が行われました。

 このデータを分析したカナダのウィンザー大学のレザ・ナカハイは、「健康状態の変化に最も影響していたのは、誰かに愛されているという実感だった」と報告しています。

「私は愛されている」「必要とされている」と感じられることが、人を元気にし、回復力や幸福感を高めるというわけです。

 ナカハイは、“愛され実感”を高める要因として、「結婚していること」「家族との十分なコミュニケーション」「地域の教会などへの参加」などを挙げています。

 とはいえ、日本では愛情表現が控えめなのが一般的。夫婦や恋人同士でも「大好き」「愛している」と口に出すのは、どこか照れくさいものですよね。