太陽と手写真はイメージです Photo:PIXTA

時にハグや握手で愛、優しさ、ぬくもりを感じて、殺伐としていた気分が一変するもの。ちょっとした勇気で「手」を差し伸べるだけで、自分も周りも幸せになれると、家事代行サービスのパイオニア企業の創設者は言う。※本稿は、高橋ゆき(高の字は、正しくははしごだか)『ウェルビーイング・シンキング』(日経BP)の一部を抜粋・編集したものです。四方八方に伝わるエネルギーを感じられるという著者の意図から、文中の「気」は正しくはきがまえに「米」の旧字体を使用しています

どんなに離れていても心は
いつもピタッとそばにいるよ

 心から気にかけ、想いを寄せる相手であっても、24時間、365日一緒の空間にいることはできません。家族、恋人、友人、上司、部下、お客様……。どんなに大事な人であっても、離れて過ごす時間は生まれます。

 コロナ禍は特にそうでした。在宅ワークするメンバーと朝礼をしたり、個別ミーティングをしたり。

 でも、そばにいられることが決して当たり前ではないからこそ「どんなに物理的に距離が離れていても、心が“ピタッと”そばにいること」、そして「『いつだってピタッとそばにいるよ』と、相手にきちんと言葉で伝えること」が大切なんだと改めて気づかされました。

 私は長男が2歳、長女が0歳の時にベアーズ(編集部注/家事代行サービス大手)を創業しました。創業者として仕事をしてきて、子どもたちと物理的に一緒に過ごせる時間は、決して多くはありませんでした。

 でも、子育ては量より質。子どもが小さい頃には交換日記でコミュニケーションをとり合ったり、スポーツや旅行などの体験を共有したりしていました。子どもたちが話す言葉や行動を注意深く見守り、「ママは自分のことをよく見ている」と分かるような声がけを心がけました。悩みがあるときには一緒に解決策を考えました。何より、いつも「ママの心はピタッとあなたたちのそばにいるよ」と伝えてきました。おかげさまで、子どもたちはすくすくと成長してくれました。

 一方で創業時、信頼していた社員たちが次々に辞めてしまった時期がありました。当時は、「私はあんなに信頼し愛していたのに……」と悲しい気持ちでいっぱいでした。でも、どんなに愛していても、相手に伝わっていなければ何の意味もありません。今思えば、子どもたちに対してできていたことが、信頼していた社員に対してできていなかったのです。

 それからは、愛と感謝を言葉と行動で示すようにしています。握手とハグは当たり前。「心はいつもピタッとそばにいるよ」という言葉もしょっちゅう投げかけています。

 互いに心がそばにあることを“受信”し合えば、そこに“信頼”と“絆”が生まれます。