絶頂か崩壊か 半導体AIバブル#12Photo:Bloomberg/gettyimages

トランプ米大統領が半導体関税の導入を表明し、台湾積体電路製造(TSMC)の米国工場の投資が加速している。米国市場で半導体製造装置の導入が本格化するが、日本勢は不利な戦いを強いられそうだ。特集『絶頂か崩壊か 半導体AIバブル』の#12では、その衝撃を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

トランプ半導体関税の導入検討へ
TSMCは米国工場への投資を加速

 トランプ米大統領が半導体関税の導入に乗り出している。米商務省によるサプライチェーンの調査を経て、半導体や半導体製造装置の関税の導入が検討される見通しだ。

 狙いは、半導体の米国内での生産を増やすことだ。すでにトランプ氏の圧力を受けた台湾積体電路製造(TSMC)は米国アリゾナ州で進めている工場の建設を加速させている(詳細は本特集の#11『トランプ半導体関税の真の標的は「台湾→米国へのサプライチェーン強制移転」、日本企業も震撼!』参照)。

 TSMCは4月17日の決算説明会で、アリゾナ州の工場進出の現状を報告。それによると、第1工場では、回路線幅4ナノメートル(ナノは10億分の1)の半導体の生産を開始しており、3ナノ半導体を作る第2工場でも建設は完了して量産準備に入った。最先端の2~1.6ナノ品を生産する第3工場は2025年中に建設を開始する計画で、30年までとしていた稼働開始の時期は大幅に早まる公算が大きい。

 TSMCが3月に発表した1000億ドルの追加投資では、さらに三つの先端工場の建設が計画されることになり、アリゾナ州への投資総額は1650億ドルに膨らむ。

 魏哲家・最高経営責任者(CEO)は、17日の説明会で、将来的に米国のアリゾナ工場では、同社が手掛ける2ナノ以降の先端半導体の30%を生産することになるとの見方を示した。

 それでは、TSMCによる米国シフトは、日本の半導体製造装置メーカーにどのような影響を与えることになるのだろうか。次ページでは、その詳細を説明していく。一面では、日本の製造装置メーカーにとって、米国向けの出荷が増えるのでプラスの影響がある。だがそこに、半導体関税が課されることになれば、事態は複雑になりそうだ。