日産にとって、新型ルークスが経営再建にどれほど資するかは不透明な点がある。今回の新車が自前の工場での生産ではなく、また軽自動車という販売価格の低い商品のため、利幅がそこまで大きくはないためだ。とはいえ、販売会社にとっては販売台数を積み上げるために必須の商品であることは確かで、日産が衰退する国内販売を強化する一手となる。今回の新型車は、軽で最も売れ筋のスーパーハイトワゴンカテゴリの新車だけに、その販売動向に注目が集まる。
三菱自としても、デリカミニ・eKスペースの販売拡大はもちろん、ルークスの販売量にも期待がかかる。ルークスの販売が好調であれば、それだけ主力の水島工場の稼働をキープすることにつながるからだ。
日産と三菱自は、この軽自動車の合弁事業をベースに、16年に日産が三菱自へ34%出資する資本提携を結び、ルノー・日産・三菱自の日仏3社連合を形成してきた。
だが、ここへきて、日産の業績不振や資本構成の変化などで3社連合の枠組みが揺らいでいる。ルノーの日産への出資比率の引き下げだけでなく、日産も三菱自への出資比率を引き下げており、現在は26.67%にまで低下した(今年3月末時点)。
三菱自としては、日産が筆頭株主であることに変わりはないが、三菱商事が22.23%と2位の株主になっていることから、三菱自における3社連合の重要性が低下しているという指摘もある。さらに、昨年のホンダ・日産経営統合構想でも、三菱自はやや外側の位置から趨勢を見極めるなど、その立場が微妙なものとなっていた。
とはいえ、利幅が薄いものの、軽自動車が圧倒的なシェアを占め、販売や開発コストなどでし烈な競争環境となっているのが国内市場だ。そこでの生産・販売網を維持するためには、やはり日産と三菱自も、お互いの“共闘”が避け難いものとなっているように思える。
(佃モビリティ総研代表 佃 義夫)