それに対し、コールド・ストーンのサービスは、設備スペース、提供時間、さらに店員のパフォーマンススキルという属人性の高いオペレーションを必要としました。これにより、コストと品質維持の難度が高まり、結果として規模拡大の障壁となったと考えられます。

 また、目玉であった「歌」のパフォーマンスも、常に新鮮さを保ち続けることが難しく、日常的な来店を促す誘因としては課題があったと言えるでしょう。

図表:サーティワンアイスクリームとコールド・ストーン・クリーマリーの比較出典:筆者作成 拡大画像表示

 サーティワンの強みは、「選ぶ楽しさ」を中心とした「手の届く非日常」という価値を、全国どこでも味わうことのできる確固たる「仕組み」を構築したことと言えそうです。これは、一朝一夕には築くことのできない模倣困難な強みです。

「手の届く非日常」を支える
バリューチェーンを解剖

 ここで、サーティワンの体験を支えるバリューチェーンを「主活動」とそれを支える「支援活動」から押さえておきましょう。

<主活動>
● 購買物流
 サーティワンの代名詞と言えるのが、常時32種類を備える多彩なフレーバーです。その核となる牛乳、乳製品、フルーツ、チョコレートなどは、約70%が国内調達、約30%が海外から輸入で、品質基準を満たす原材料を安定的に調達しています。

● 製造・生産 研究開発スタッフが世界のトレンド、季節性、顧客の嗜好を分析し、新製品開発を行います。これまでに全世界で1400種類以上のオリジナルフレーバーを開発し、毎月10種類以上の限定フレーバーを入れ替えるなど、高い商品開発力を誇っています。

● 物流 厳格な温度管理を実現し、全国の店舗に品質を維持したまま届ける専用の仕組み(契約倉庫、専門配送業者との連携、配送ルートの最適化など)を構築しています。

● マーケティング・販売 多彩なフレーバー、試食、カラフルな店舗空間などで、「選ぶ楽しさ」を前面に出しています。「スーパーマリオ」、「ポケットモンスター」、「ディズニー」など、人気キャラクターとのコラボレーションも豊富です。また、31Clubアプリ(2025年6月時点で会員数1000万人突破)、SNS、モバイルオーダーなどデジタルツールも駆使し、顧客のエンゲージメントを強化しています。

● サービス フレーバー知識、盛り付け技術、コミュニケーション能力の強化など徹底したスタッフ研修を実施し、質の高い接客を行っています。