● 変容(Transforming)――環境に応じて柔軟に組織を変える
そして、サーティワンは、捕捉した機会を確実にものにするため、自社の提供の仕組みそのものを柔軟に変えていきました。
コロナ禍以前は対面販売が中心でしたが、デリバリーサービスやモバイルオーダーを本格展開することで、「店舗での体験」という強みを維持しつつ、非接触でも顧客体験が維持されるビジネスモデルへと変容させたといえます。
このように、サーティワンは単に“体験価値を提供するアイスクリームブランド”として成功しているのではなく、「変化を読み、挑戦し、自ら進化できる企業」として、持続的な成長を実現しているのです。
サーティワンに学ぶ成功の秘訣
非凡な戦略に頼らず、王道を地道に進む
サーティワンの戦略には、成功のために押さえておきたいポイントがいくつも隠れています。
まず、店舗数からもわかるように、サーティワンのポジションは唯一無二で圧倒的です。業界内に類似例を見ない、ユニークな立ち位置を確保することは、競争上とても有利に働くことがわかります。
また、提供価値とオペレーションを整合させ、時間をかけて磨き上げたバリューチェーンは、模倣困難性を高めます。材料の調達から商品の提供までを支える各プロセスは試行錯誤の上で構築されたものであり、他社にとって高い障壁となっているのです。
ただ、顧客を取り巻く環境が変化する中で、築き上げたシステムがいつまでも通用するとは限りません。確立した優位に甘んじることなく、柔軟にケイパビリティを構築し直す能力が、現代での成長の鍵となります。
いずれも特別変わったものではなく、王道と言ってよいポイントばかりです。
サーティワンの事例からわれわれが学ぶべき最も重要な点は、非凡な戦略に頼ることなく、基本に忠実に地道にやり抜くことである、と言えそうです。